“熱中症予防”で悩ましい運動会の実施時期「春→秋」に変更の動き加速も日程調整に苦慮

これから本格的な運動会シーズンに突入しますが、懸念されるのが熱中症です。学校側も対策や実施時期に頭を悩ませています。

校庭の気温は27℃ 練習中に体調不良者も・・・

10日午後、福岡市中央区の赤坂小学校では運動会に向けた練習が行われていました。

金子壮太記者「午後3時半現在の気温は27℃。5月初旬ですが太陽の光が強く照りつけています」

赤坂小学校 御庄直之教諭「きつかったら近くの人や先生に言ってください。周りの人たちの体調も悪ければよく見てあげてくれると先生たちも嬉しいです」

運動場で練習を始めて1時間後、先生に付き添われて練習から抜ける児童がー

児童「くらくらした頭が・・・ちょっと吐き気がする」

教諭「きょうは見とき、テントの下で、無理したら体調悪くなる」

赤坂小学校 石川将貴教諭「水筒の水が足りなくなったり、水飲んでいても体調悪くなる子はいるので、休憩する時間はとっています」

体育祭の練習中に23人が搬送

この時期、心配なのが熱中症です。去年、糸島市の糸島農業高校では、体育祭の練習中に生徒が体調不良を訴え、23人が熱中症とみられる症状で病院に搬送されました。地球温暖化の影響による気候の変化で、春の運動会が集中する5月の平均気温も年々上昇し、熱中症のリスクも高まっていると専門家は指摘します。

福岡大学スポーツ科学部 檜垣靖樹教授「最近では暑い日が前倒しになっていますし、今年もゴールデンウィークものすごく暑かった。まだ暑くなっていない状態から暑くなると、体が慣れていないので同じ温度だとしても体が悲鳴をあげる。秋口だと暑さには比較的慣れている状態だと思う」

運動会を春→秋に変えた学校も

学校側も開催時期について頭を悩ませています。福岡市の警固小学校は今年から秋に運動会を実施することに決めました。

警固小学校 田中賢治校長「今年は10月26日に実施します。一番は熱中症対策で、昨年の練習が5月の連休明けから始まったが、暑い日が続いて子どもたちの様子を見ているとこちらも心配になった。(運動会当日)終わったときに4人が軽い熱中症で保健室に来てそういうのを見て危ないなと思ったのがまず一つですね」

福岡市教育委員会によりますと、今年、福岡市内にある小・中学校の運動会は、224校のうち155校が春に、69校が秋に開催します。警固小学校も含め6校が運動会の開催時期を春から秋に変更しました。子供の安全のためですが、行事を分散化するために例年秋に行っていた音楽発表会を6月にするなど、日程の調整は簡単ではなかったといいます。

警固小学校 田中賢治校長「自然教室とか修学旅行とか1年前から予約している。運動会と近づけると5・6年生がきついのでそこは考慮した」

一方、赤坂小学校は市内の小学校で最も早い5月18日に開催することを決めました。

赤坂小学校 今林義勝教頭「30℃以上にならない時期にすることによって熱中症を防ぐという意味がある。これまでの練習内容でいくと、かなり前倒しになって入学式の後からすぐ練習となるが、例えばICTを使って教室でタブレットでダンスの動画を見て練習をしたりとか、工夫をして短い期間で練習をするようにしている」

練習時間の半分を扇風機や冷風機、ミストが出る装置など、熱中症対策が整った体育館で実施。運動場での練習前には教員が天気予報や熱中症警戒アラートを確認したうえで、特殊な温度計を使って暑さ指数も測定します。

赤坂小学校 才田あゆみ養護教諭「基準が決まっていて温度が危険になると外で活動が出来なくなるので、ポスターで掲示をしてそれを見ながら活動をしている。昼休み遊べないこともある」

運動会当日も午前中のみの開催で、さらに学年によって2つのグループに分け、競技がない時間帯は、オンラインで教室から応援することにしています。

屋根付きドームや「夜の体育祭」・・・開催方法の見直しも

暑さを避けるために運動会の開催方法を見直した学校もあります。九州産業高校は、おととしから屋根付きのみずほPayPayドームで体育祭を開催。福岡第一高校と第一薬科大学付属高校は、おととしから体育祭の開催時間を、夕方6時以降に変更しました。

専門家は、熱中症になりにくい時期を選び、環境を整えたうえで、発症した人が出た場合に備えることが重要だと話します。

福岡大学スポーツ科学部 檜垣靖樹教授「熱中症になるリスクはあるので、実施する月を決めるよりもいつ何時そういうことが起こっても速やかに対応できる環境づくりが大事だと思う」

年々厳しさを増す暑さ。運動会を安全に楽しめる行事にするため、学校側には改めて実施時期や方法を検討し、熱中症の予防対策を行うことが求められています。

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