「名前をカタカナで書いてしまって…」笑いが交じり、珍エピソードを披露した“異質な”現役引退会見。宇野昌磨のスケート第2章は「悲しいのではなく、前向きに」

思わぬ珍エピソードに会場が笑いに包まれた。

フィギュアスケートで日本男子唯一の世界選手権2連覇を飾った宇野昌磨が5月14日、都内で引退記者会見を行なった。会見はYouTubeチャンネル『トヨタイムズスポーツ』でも生配信され、スケート人生の第2章に向けた“宇野節”が炸裂した。

26歳のスケーターはすがすがしい表情を見せ、自然体のまま会見に臨んだ。5歳の時にスケートと出会い、21年間続けた競技生活について「まさか僕が世界選手権で優勝する選手になるとは思っていなかった」と振り返る。加えて、「フィギュアスケートをやってて良かったと思っています。157センチという身長で、他に輝けるスポーツもなかなかないので」と、自身の身長に触れながら「すごい偶然に、このフィギュアスケートを始めて本当に恵まれていると思います。僕にとっては、何もマイナスな気持ちに思うことはなかったです」と、スケートへの愛情を窺わせた。

また、所属先であるトヨタ自動車の豊田章男会長とのマル秘エピソードも紹介。「喋りやすいんですよ。本当に成績が良くない時もたくさん心配して頂いたり、いい時も喜んでくれているという言葉をもらった」と、同会長の気さくな性格を明かしながら感謝を示す。

続けて、「本当に失礼な事も何回かしてしまったことがあるんですけども…」と自ら切り出し、「ご自宅にお邪魔する機会が一度ありまして。そこの場で(色紙に)会長の名前を書くときがあって(豊田ではなく)カタカナで書いてしまって…」と苦笑い。「許してください」と詫びながら、「それでも笑って『こういう名前だから覚えて帰ってね』っという人なので。そういう優しい方でした」と話し、会場の空気を和ませた。
他にもオリンピックや世界選手権をはじめ、多くの国際大会でタイトルを獲得した輝かしい実績を紹介されると、「引退してまだ間もないが、すごい彼は良くやったと思う」と客観的に自身を評価。「自分のことなので、あまり褒めちぎりたくはないんですけれども、本当に素晴らしいことを成し遂げることができたなって思っています」と頬を緩ませながら、自らの功績を褒め称えた。

約1時間ほどの短い時間だったとはいえ、笑いが交じる和やかなムードのまま記者会見は終了。言葉の節々に宇野らしいユニークに富んだ明るい雰囲気は、会見序盤で発した「前向きに」という言葉に集約されていたような気がする。

「引退というのは悲しいのではなく、前向きに。次に向けてスケートを頑張るという思いです。競技とは近くなるかもしれないですけど、毎日の練習が楽しくなるような、心から踊るようなスケートをしていきたいです」

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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