Q.「パートナーが五月病かもしれません。どう接すればいいですか?」【公認心理士が回答】

家族やパートナーなどの身近な人が五月病になってしまったとき、乗り越えるために大切な接し方があります。かけてはいけない言葉・避けるべき言葉、回復をサポートする接し方について、解説します。

Q. パートナーが五月病の場合、どう接すればいいのでしょうか?

Q. 「パートナーが、五月病かもしれません。普段あまりないことなので心配ですが、食事のときまで憂うつそうな顔をしていたり、仕事から帰るなり疲れたと毎日だらだらしているのを見ると、こっちも少しイライラしてしまいます。こういう時は、どう接すればいいのでしょうか?」

A. プレッシャーを与える言葉は避けて! 「いつも通り」でいるやさしさを

「五月病」は正式な病名ではありませんが、無気力やだるさ・疲れやすさなどの心身の不調に悩まされ、苦しむ方が少なくありません。家族などの身近な人は、早く元気になるように励ましたり、行動を促したりしがちですが、かけるべきではない言葉もあります。 筆者はカウンセリングにおいて、「五月病」に悩んだことがある方とお話することがあります。そのときに、周囲から言われてつらかったものとしてよく聞くのは、以下のような言葉です。 ・「しっかりして!」「はつらつとしなさい」など、発破をかける言葉 ・「連休前まで元気だったのに」など、元気な時と比べる言葉 ・「自分で選んだことだから頑張れ」など、弱音を許さないような言葉 ・「〇〇をやってみたら」「これをやってみよう」など、チャレンジを促す言葉 ・「周りに置いていかれるよ?」「大黒柱なんだから」など、プレッシャーをかける言葉 「五月病」を乗り越えるために大切なのは、「いずれ自然によくなる」とおおらかに考えること。その上で、無理のない範囲であせらずに、目の前の日常生活を淡々と送っていくことです。 身近な人たちが無理に元気づけたり、プレッシャーを与えたりすることで、本人のあせりや不安が増してしまうと、不調が長引いてしまうことがあります。こうして不調のときに無理をして頑張りすぎてしまうと、うまくいかなかったときに、過剰に自信を喪失してしまうこともあるのです。 パートナーや家族が落ち込んでいると、「早く元気になってもらうには、どうしたらいいのだろう?」とあれこれ気を回してしまうかもしれません。でも、不調に陥った人に対していちばんのサポートになるのは、心身を休める環境を整え、本人の状態を否定せず、必ず良くなるという希望を与えることなのです。 こうした「やさしさ」こそが不調に悩む人に安心を与え、回復を後押しします。 一方で、落ち込みがひどい、最低限の日常生活が送れないなど、より深刻な心の病気の可能性が感じられるなら、見守りながらも、必要に応じて次の対処を考えることも大切です。心の専門医への受診、カウンセリングの利用も考慮し、所属先の上司や教員への相談を勧めることも検討してみましょう。

大美賀 直子プロフィール

公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格を持つメンタルケア・コンサルタント。ストレスマネジメントやメンタルケアに関する著書・監修多数。カウンセラー、コラムニスト、セミナー講師として活動しながら、現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法について幅広く情報発信を行っている。 (文:大美賀 直子(公認心理師))

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