『くる恋』朝日×公太郎×律のまことへの変わらぬ愛情 視聴者を魅了する思わぬサプライズも

人は多面的な生き物だ。状況に応じて異なる表情を見せるだけでなく、時には自分でさえ気づいていない面を持っていることだってある。それでも、大切な人にだけ見せる素顔、社会の中で演じる役割……そのどれもが本当の自分の一部なのだ。火曜ドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系)第6話では、主人公のまこと(生見愛瑠)を中心に、彼女の過去を知る人たちの心の機微と、3人の男性との絡み合う関係性が繊細に描かれた。

まことのLINEに、突如現れたのは自称“親友”の「YUKA」という人物。その正体は上山由佳(田鍋梨々花)だった。久しぶりの再会に、由佳は感極まってまことに抱きつくが、その“友情”には何やら不穏な空気が漂っていた。

一方、まことは、由佳が口にした「隼人」という人物の存在が気になって仕方がない。また香絵(丸山礼)は由佳がまことの親友だという事実に違和感を覚え、彼女を怪しく感じ始める。記憶のないまことは由佳が語る昔話に楽しそうに耳を傾けているが、怪しい匂いがぷんぷんと漂っていた。由佳への不信感を抱いた香絵は、朝日(神尾楓珠)と公太郎(瀬戸康史)に同窓会への出席をやめるよう頼むが、公太郎はその頼みを断る。第5話で突如現れた、由佳と隼人の存在が物語を掻き乱していく。

その後、律(宮世琉弥)がまことに会いにリングショップにやって来て、由佳から高校の同窓会への招待を受けたことを知る。由佳の「自虐しつつのキラキラインスタ」に律も彼女のことを気になっている様子。まことの安全を心配する周囲の人々の中で、ついに同窓会の日が到来する。

同窓会当日、由佳から語られる過去のエピソードはまことをやんわりと、しかし確実に傷つけるものだった。実際はまことが隼人に告白したのではなく、隼人がまことに告白したのだが、まことが由佳の想いを知りながら隼人に告白したことになっていた。まことに対して惨めさを感じた由佳は、周囲に嘘をついていたのだ。キラキラしたSNSの投稿の裏で、彼女の抱える心の闇が、徐々に明らかになっていく。

由佳の言葉に動揺しながらも、まことはそれでも真摯に彼女に向き合おうとする。責められ続けるまことの耳を塞いだのは、イベント会社の人に扮した律(宮世琉弥)だった。律はまことを守るように、由佳とまことの間に立ちはだかる。さらに、朝日も駆けつけ、まことを取り巻く大切な人々が学校に集結する流れに。

まことは由佳の悪意を持った嘘が明らかになった後も、引き続き彼女と向き合おうとする。他人に見せている面はその人の一面でしかないけれど、どれも本物なのだと、まことは由佳に語りかけているように思えた。朝日、公太郎、律から言われた言葉について、「バラバラだけど、きっと全部私なのかなって」と由佳に打ち明けるまことの頼もしさに、記憶を失ってから彼女が積み上げてきたものの大きさを知ることができたような気がした。

まことを思う男性たちの思いは、それぞれ異なる形で表れる。プールに落とした指輪を拾い、いつも最後の大切なところでまことを助けてくれる公太郎。ピンチの時に颯爽と現れ、新しい視点をくれる律。不器用ながらも、まことだけでなく、由佳にも手を差し伸べようとする朝日。彼らの瞳に映るまことの姿は、少しずつ違うのかもしれない。しかし、彼らの思いの根底にあるのは、まことへの変わらぬ愛情なのだ。

また今回のエピソードでは、視聴者への思わぬサプライズも。律、朝日、公太郎が学ラン姿で登場し、視聴者を魅了した。宮世琉弥(20歳)、神尾楓珠(25歳)、瀬戸康史(35歳)と年齢は異なるものの、3人ともが学ランを見事に着こなし、ファンの心を掴んだのではないか。最初は接点のなかった3人だが、まことを中心に絆を深めていく様子は、観ていて微笑ましい。「指輪の王子様」が誰であるかは、物語の大きな見どころの一つだが、律、朝日、公太郎のまことへのあたたかな想いが、どうか誰も傷つかない形で結実してほしいところだ。彼らの思いが交差する先に、まことの幸せが待っていることを願ってやまない。

(文=すなくじら)

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