『Destiny』なぜ真樹は“不要な罪”を被り続ける? 奏は人生で2度目の“共犯”関係に

「なんでこんなふうにいつもおかしな方へおかしな方へ行くのかな。やっぱ俺が悪いのかな?」

『Destiny』(テレビ朝日系)第6話で真樹(亀梨和也)が奏(石原さとみ)に病室でこぼした言葉だが、本当にその通りだ。どうしてこうも予期せぬ方に、彼自身を追い詰める方にばかり事が転がっていくのか。彼の手からどれだけのものがこぼれ落ちていけば気が済むのか。

今度は真樹の実家が何者かによって放火され、父親で弁護士の野木浩一郎(仲村トオル)が意識不明の重体に陥ってしまう。その罪を自白した真樹はまたしても取調室で奏と、被疑者と検事として向き合う。「私たち、もう会うのはやめよう」と奏から告げられた矢先、またここに戻ってきてしまう。やはり2人は12年前から“惹かれ合う力が半端ない”。そして切っても切れない磁力で今も引っ張り合っている。そのことに奏の婚約者で真樹の主治医・貴志(安藤政信)も気付いているからこそ、通常なら絶対に許したくない真樹の病室への付き添いを奏に促すしかなかったのだろう。

真樹は自分にとっての大学時代の奏を“恋人以上”とした。だが、大切で大切で仕方ない相手だったからこそ、その相手や想いを守り通すにはもはや自分が消えてしまうほかないと極論に振り切れてしまったのかもしれない。取り調べにかこつけて、空白の12年間を埋め合わせるかのような問いかけをし、答え合わせをしていく2人の姿が切ない。

そして、やはり実家に火を放ったのも真樹ではないのだろう。どうして彼はこうも不要な罪まで被ろうとするのか。そうやって自分を粗末に扱うことが誰かに対する贖罪になるとでも思っているのだろうか。カオリ(田中みな実)の事件もあって、自分だけが生き残ってしまったことに罪悪感を抱いているのかもしれないし、自身のことを周囲を不幸にする元凶のように考えているところがあるのかもしれない。

真樹はライターで火を着けたと証言していたが、実際には屋外で撒かれたガソリンが火元となった可能性が浮上し、不審な男の目撃情報も寄せられた。

真樹が不要な罪を被っている間にも、留置場で倒れて吐血してしまうほどに彼の胆嚢がんは転移し、どんどん進行している。自分の命が長くないと悟った真樹は「最期に一緒にいたいのは奏」という自身の本心に気づき日本に帰国したと、奏本人に本当の理由を打ち明けた。誰もが羨むような家庭に生まれながらも愛情に飢え、誰にも心を開くことができなかった真樹に、人生のリミットを意識した際に思い浮かべられる顔があってよかった。自分の幸せに無頓着で自身を後回しにしてばかりの真樹が、奏については自分の本心に従って素直に行動できたことに、それがたとえ許されざるものだとしても安堵してしまうのが正直なところだ。

相変わらず真樹はどこまでも無邪気に奏のペースを乱し、振り回し困らせる。「奏、逃げない? 2人で」とまた悪戯っぽく、だけど切実に奏に想いを託す。自身の寿命を人質にとり、彼女に人生で2度目の罪を犯させた。奏にとっての1度目の罪は、大学のテスト中にたまたま隣の席に座った面識のない真樹から持ちかけられたカンニングへの協力だった。そしてそこから奏のキャンパスライフは一気に彩豊かなものになったのだった。ただ、その際に大きな喪失が待ち受けていたわけだが……。今回2度目となる真樹と奏の共犯関係。2人の逃避行はどこに向かい、12年越しに一緒に見た景色はそれぞれの目にどう映るのだろうか。

祐希(矢本悠馬)も知美(宮澤エマ)に何かを言いかけ、何やら後ろめたいことを抱えていそうでそれも気になる。
(文=佳香(かこ))

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