【シンガポール】東南ア新興テックへの投資加速[金融] 豪VC、年内に5.5億ドル新規調達

オーストラリアのベンチャーキャピタル、スクエア・ペグの経営陣(同社提供)

オーストラリアのベンチャーキャピタル(VC)のスクエア・ペッグ(Square Peg)が、東南アジアを中心に新興テック企業への投資に注力している。投資家への資金の還元率も高く、引き続き域内を軸に有望な企業に出資する考え。年内には5億5,000万米ドル(約860億円)規模の新ファンドを組成し、投資を加速させる計画だ。【Celine Chen】

スクエア・ペグは2012年設立。20年に東南アジア事業をカバーするシンガポール拠点を開設した。海外ではイスラエルでも投資しているが、最近では東南アジアが最も注力する市場となっている。

東南アジアで投資した新興テック企業には、シンガポールのレストラン予約サービス運営社のチョープ(Chope)や大学出願を簡素化する教育技術プラットフォームのシアルフォ(Cialfo)、不動産ポータルサイトのプロパティーグル(PropertyGuru)、遠隔医療サービスを提供するドクター・エニウェア(Doctor Anywhere)などがある。ベトナムのデジタル銀行ティモ(Timo)にも出資している。

創業からこれまで投資家に10億Sドル(約1,160億円)を超える資金を還元してきた。

スクエア・ペグの広報担当者は「エグジット(投資資金の回収)からのリターンは16社で平均6倍、利回りを示すIRR(内部収益率)は44%になる。DPI(投下資本に対する実現益の割合)は4.6倍に拡大した」と明らかにした。

スクウェア・ペグは投資先を平均以上のリターンを生み出す新興企業に成長させることに成功したのを受け、今年後半にも5億5,000万米ドル規模のファンドを組成することを計画している。同社にとって6番目のファンドで、5番目のファンドと同規模になるという。

広報担当者によると、新ファンドは東南アジア、オーストラリア、イスラエルの新興企業に投資する。注力する分野は、フィンテック(ITを活用した金融サービス)、人工知能(AI)、SaaS(ソフトウエアをクラウド経由で提供するプラットフォーム)、気候変動、ヘルスケアなどだ。

スクウェア・ペグのディストリビューション&パートナー責任者で、資金調達と投資家対応を担当するレイラ・リー氏は、「東南アジア、オーストラリア、イスラエルの重要性は高まっている。12年前の創業時はテック系ユニコーン(企業価値が高い新興企業)の約9割が米国と中国だった。現在は5割近くまで低下し、より多くの企業が世界各地で設立されている」と語った。

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