「海賊王に俺はなる！」
このセリフがおなじみの声で脳内再生される人はどれくらいいるだろう。これはTVアニメ『ONE PIECE』の主人公・ルフィのセリフで、声優を担当しているのは田中真弓である。実は田中、現在放送中のNHK連続テレビ小説『虎に翼』に出演しているのである。
田中が演じているのは、花江（森田望智）の実家である米谷家で働く女中・稲。寅子（伊藤沙莉）の母・はる（石田ゆり子）が不在中には、花江とともに猪爪家へ家事の手伝いに来てくれたこともある。当時の寅子はお見合いに3度失敗するが、結婚に前向きになることができず、モヤモヤとしていた。そんな寅子に稲は「女は男みたいに好き勝手にゃ、いかないからね」「受け入れちゃいなさい！ 何も考えずに」とアドバイスしていた。
声優というのは声はよく聞いていても、普段、あまりその姿、ましてや身体の演技を観ることは少ない。田中の出演に驚いた人も多かったことだろう。だが、ベテランの声優ほど舞台役者出身だったり、役者を目指していた過程で声優になったりした人が多い。田中もそのひとりで、演技の経験は豊富だ。田中の優しい演技から、稲のシャッキリとしているが懐の深い様子が感じられた。
そんな田中は出演後、『虎に翼』の公式X（旧Twitter）で公開された動画にて「何やら船の仲間が1人、乗り込んでくるようでございます」と意味深な予告を残した。後日、寅子の父・直言（岡部たかし）が巻き込まれた「共亜事件」の裁判で裁判長を務めた武井裁判長として、『ONE PIECE』でサンジの声を担当している平田広明が登場した。こちらも、『虎に翼』の公式Xで「田中真弓、平田広明ともども『くそお世話になっております』」とサンジのセリフを交えたコメント動画が公開されている。
このように『虎に翼』では現在、主に声優として活躍している人や過去作品で意外な繋がりがあった人たちをキャスティングしていることが多い。ちなみに轟（戸塚純貴）や久保田（小林涼子）が配属され、指導を受けている錦田弁護士を演じている磯部勉も声優として知られているひとり。洋画の吹き替え声優として数多くの作品に出演し、メル・ギブソンやブルース・ウィリスなどの俳優の声は作品にまたがって吹き替えしている。
錦田弁護士は、「共亜事件」で若島大臣（古谷敏）の弁護を担当。この「共亜事件」で新聞記者の竹中（高橋努）に黒幕と疑われていたのが、水沼（森次晃嗣）だった。実は水沼を演じている森次晃嗣と、若島大臣を演じている古谷敏は特撮ドラマ『ウルトラセブン』で共演経験がある。森次は主役のモロボシ・ダンを、古谷は、ウルトラ警備隊のアマギ隊員役を演じていたのである。『虎に翼』の公式Xでは、「あのヒーローとしても活躍したお二人です」とのコメントとともに森次と古谷のツーショットが投稿されている。
声優を起用するなど意外ではあるが、しっかりとした実力派俳優たちで寅子の脇を固めている『虎に翼』。俳優たちの間に意外な繋がりがあると、公式SNSでそれを明かしてくれるのもまた楽しい。
寅子の物語はまだまだ続いていく。今後も、どんなキャラクターにどんなキャスティングがなされているのか、楽しみにしながら観ていきたい。
参照
https://twitter.com/asadora_nhk/status/1774939572818034789
https://twitter.com/asadora_nhk/status/1785450119036600417
https://twitter.com/asadora_nhk/status/1785521284295860360
（文＝久保田ひかる）
