【住宅ローン】「ペアローン」を借りる夫婦は約1割。向いているのはどんな世帯?住宅のプロが解説

気になる住宅ローンのお悩み「メリット・デメリット」とは

国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査 報告書」によると、注文住宅取得世帯のおよそ8割が住宅ローンを利用しているとされています。

今回は三井住友信託銀行株式会社が設置している「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」の調査結果より「ペアローン」について深掘りしていきます。

調査概要は以下の通りです。

<調査概要>

  • 調査名:「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)
  • 調査対象:全国の20~69歳 ただし関連業種(金融、調査、マスコミ、広告)従事者を除く
  • 調査方法:WEBアンケート調査
  • 調査時期:2024年1月
  • サンプルサイズ:1万811人
  • リリース公開日:2024年4月25日

調査によると、単独ローンが多数派であるものの、年代別に利用率をみてみると、20歳代、30歳代ではペアローンの利用が多くなっているようです。

また住宅ローンの利用経験者に対して借入形態について尋ねたところ、単独ローンの利用率は68.3%で、ペアローンの利用率が10.8%だったそうです。

ペアローンの利用率は全年代では1割ほどですが、20歳代が16.5%、30歳代が18.6%と、他の年代よりも高くなっています。

そして全ての年代において、ペアローンの方が単独ローンよりも当初借入金額が高額化していることがわかっています。

そもそもペアローンとは、一つの物件に対して夫婦または親子がそれぞれ契約者として住宅ローンを組むことをいいます。

それぞれの収入に応じて借り入れが可能なので、どちらか一方が契約者になって単独でローンを組むよりも借入金額を増やすことができるため、金額が高額化していると考えられます。

そんな「ペアローン」ですが、住宅ローンを借りる上でどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。次章で解説していきます。

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ペアローンのメリットとデメリット

【写真全2枚中1枚目】ペアローンのメリット・デメリットとは?次ページではペアローンに向いている世帯の特徴を解説

ペアローンでは、単独で住宅ローンを申し込むときの条件を申込者の両名が満たすことが必要になります。

そんな「ペアローン」ですが、組むとなればどのようなメリットがあるのでしょうか。

以下に考えられるメリットを挙げていますので、参考にしてみてください。

ペアローンのメリット

  • 申込者2名がどちらも主債務者になれるので、借入額を増やすことができることができる
  • 住宅ローン控除の要件を満たせばそれぞれが住宅ローン控除の適用を受けることが可能
  • 契約者2名ともに団信(団体信用生命保険)に加入することができる
  • 申込者2名がそれぞれ固定金利、変動金利といった異なる金利プランを選択することができる

住宅の価格が上昇している昨今では、ペアローンで借入額を増やすことによって、物件の選択肢が広がることがメリットとして挙げられます。

また、住宅ローン控除の条件を満たせばダブルで節税効果が期待できるのもうれしいメリットです。

さらに、それぞれが団信に加入することによって、一方が亡くなったり重度障害になったりしても、その人の分の残債は保険で完済することができるという安心感もありますね。

一方でペアローンにはデメリットも存在します。

具体的なデメリットを以下に記載しているので、参考にしてみてください。

ペアローンのデメリット

  • 「出産」、「子育て」、「介護」、「転職」などで片方の収入が途絶えた時には返済が厳しくなる
  • 借入金額を増やし過ぎてしまう可能性がある
  • 簡単にローンの借り換えができない
  • 片方に万一のことがあっても、残された方の返済義務はそのまま継続する
  • ローン契約時の事務手数料や諸費用(印紙税、登記代行手数料など)が2名分かかる
  • 夫婦の場合には、ローン返済中に離婚すると家の財産分与が絡む

ペアローンは、諸費用などのトータルコストが増えるデメリットもあります。

このようにペアローンにはデメリットもあるので、それらを十分に把握した上で利用するかどうかを検討することが大切です。

ペアローンに向いている世帯の特徴

ペアローンに向いている世帯の特徴は?

ペアローンには前述したようにデメリットも少なくないので、全ての世帯に向いている訳ではありません。

ペアローンに向いている世帯の特徴には次のようなものがあります。

  • 夫婦ともに十分な収入を安定的に得ている
  • ローンを完済するまでは共働きの予定が立っている
  • 今後しばらくは生活スタイルが変わらない
  • 十分な生活資金を確保できている

夫婦ともにそれぞれ安定した収入があり、今後しばらくは生活スタイルが変わらないことがペアローンを組む最低限の条件といえます。

一方、夫婦いずれかの収入が不安定であったり、今後生活スタイルが大きく変わる予定があったりする場合には、ペアローンは不向きだといえます。

まとめ

ペアローンは同じ物件に対して夫婦または親子などが各自の収入を基準にして個別に住宅ローンを組むので、より高額な物件でも購入することができるようになります。

それぞれが住宅ローン控除の対象になるのが最大のメリットといえます。

近年では共働き夫婦が増えていて、特に若い世帯を中心に、2人でお金を出し合ってマイホームを購入することも珍しくありません。

しかし住宅ローンは長期にわたって返済していくものです。

高額な借り入れをしていると返済中にいずれかが働けなくなったり職を失ったりして返済できなくなるリスクが高まります。

さらに、ローンの返済中に離婚してしまうと非常に手間がかかるというデメリットもあります。

現在は低金利であるものの、変動金利が上昇した場合には返済額が増えるリスクもあります。

したがってペアローンを組む場合にも決して無理をせずに、余裕を持った返済計画を立てておくことが非常に重要です。

参考資料

  • 国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査 報告書」
  • 三井住友信託銀行 三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」

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