セメント大手3社/24年3月期決算、値上げ効果で業績改善も内需低迷の難局続く

セメント関連大手3社(太平洋セメント、UBE三菱セメント、住友大阪セメント)の2024年3月期決算が14日出そろった。セメント価格の引き上げが浸透して効果を発現し、3社とも増収を確保。本業のもうけを示す営業利益の改善につながった。25年3月期は年間を通じて値上げ効果が利益向上に寄与するものの、国内のセメント需要は低迷が続く。難しい経営のかじ取りを迫られることになる。
24年3月期決算を見ると、太平洋セメントは、国内で引き上げしたセメント販売価格が浸透するとともに、米国子会社の好調などを背景に増収増益となった。UBE三菱セメントは、セメント事業の値上げ完遂や安価な熱エネルギーの使用拡大などにより、国内事業が黒字化した。海外は、主に米国生コン事業での値上げの早期の浸透などが奏功し、大幅な増益となった。
住友大阪セメントも、セメント事業が値上げ効果で売り上げを伸ばした。石油・石炭価格の低下もプラスに寄与したが、高単価で購入していた石炭の影響が残り、セメント事業は赤字となった。だが下期(23年10月~24年3月)だけでみると黒字化している。
25年3月期の業績予想は、太平洋セメントと住友大阪セメントが増収営業増益、UBE三菱セメントが増収を見込む。太平洋セメントは値上げ効果に加えて、輸入石炭などの価格改善で営業利益が増加する見通し。UBE三菱セメントのセメント事業は、物流費や資材価格の上昇などが減益要因となるものの、セメント値上げ効果の年間を通じた寄与などを背景に、国内事業全体では前期並みの営業利益を確保する見込みだ。
価格改善効果が期待できるものの、建設業や物流業の「2024年問題」による需要減少やコストアップなど不安定要素も漂う。円安の進行もエネルギーコスト増につながるため、警戒する声が上がる。

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