足腰の痛み、体調不良では楽しいおでかけも憂鬱…シニアの友人付き合いは「ドタキャンOK」で気楽に【精神科の名医が助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

年をとるほど人との約束がおっくうになってくるものです。とくにシニアになれば「なんだか面倒になってしまった」といった気持ちの問題だけでなく、体がついていかなくなるのが悩みもの。また、「今度ゆっくり会おうね」といったものの、いっこうに実行されないというのも、よくあることです。今回は、シニア世代の名医・保坂隆氏の著書『お金をかけず気軽にできる 「ひとり老後」が楽しい77の習慣』(KADOKAWA)から、老後の友人付き合いのコツをご紹介します。

「ドタキャンOK」を認めてもらう

年長者はよく天気予報を見るようです。年をとると、わずかな気候の変化で風邪をひいたり足腰が痛んだりするもので、気持ちのうえではまだまだ若いつもりでも、体のほうがついていかなくなります。そこで、毎日の天気が気になるのです。

高熱が出たり、歩くのがつらいほど足腰が痛ければ、外出を控えても、微熱くらいだと、無理をして出かけてしまうのではありませんか? 仲間と約束をしていれば、「せっかく会うのを楽しみにしてくれているのに、キャンセルしたら申し訳ない」と思うからでしょう。

でも、無理をして出かけると、いつものようにはいきません。口数が少なくなったり、歩調がスローになったりします。こちらが口にしなくても、仲間ならきっとそれを感じ取って、「調子が悪いの?」と気遣ってくれるかもしれません。

それよりも前に、自分から「ちょっと風邪ひいちゃったみたいで、体がだるいの」「実は、立ったり座ったりすると膝が痛い」などと話すことになるかもしれません。

それを聞けば、仲間も気をつかって、「少しカフェで休もうか」「買い物はそこそこに切り上げよう」と予定を変更するなど、お互いに心から楽しめないでしょう。

老後の友だちは、できるだけ「ドタキャンOK」にしておくといいでしょう。「ドタキャンなんてわがまま」「相手に迷惑をかける」と思うかもしれませんが、お互いさまです。

ほかの誰かがドタキャンしても、「大丈夫よ」と受け入れる、そんな関係でいられたら、気持ちが楽になるはずです。もちろん、ドタキャンするときは必ず連絡を入れて、「ごめんなさい」の気持ちを伝えましょう。

「また今度」を「次は〇〇日」にしてみる

芸能界の挨拶は不思議なことに、朝はもちろん、昼間でも、夕方でも、さらには深夜でも「おはようございます」だそうです。

先にいた相手に、「早くからおつかれさまです」というねぎらいの気持ちから始まったとか、不夜城とも呼ぶべき業界だから「四六時中、おはようございます」と言っておけば間違いないからとか、昔から使われているから、とりあえずその挨拶ですませてしまえばいいから、などの話を聞きますが、どうやらルーツははっきりしていないようですね。

いわゆる「ギョーカイ」では、久しぶりに会った相手に「よう!久しぶり。最近どう?」から始まって、ひとしきり会話を交わすと「じゃ、そのうちに飯でも食おうよ」と言いながらその場を離れるのも慣習だそうです。しかし「そのうちに」が実現することは、ほとんどないのです。

私たちも、久しぶりに会った相手と「ご無沙汰ですねぇ」などと話を始め、お互いの近況などを話し終わると、「また今度、ゆっくりと話をしましょう」などとは言うものの、そのままになってしまうことが少なくありません。

たしかに、コロナ禍の最中には人と会うのがためらわれたものですが、それなりに落ち着きましたから、感染に気をつけたうえで、会ったり食事をしたりしても問題はないはずですね。それなのに「また今度」となり、しかも再会や飲み会、食事会が実現しないのはなぜでしょうか?

知り合いの営業マンから、こんな話を聞きました。

「偶然、大学時代の先輩とバッタリ会ったところ、ご多分に漏れず『いやぁ久しぶりだなぁ』から始まり、『最近、どう?』と、お互いの近況を簡単に伝え合いました。その先輩は『近いうちに飯でも食おう』と言いながらスマホを取り出し、自分のスケジュールを確認しながら、『で、いつにする?』と。お互いの予定を確かめたかと思ったら、その場で日程を決めてしまったんです」

「場所はあとで、いくつかの候補をメールするから」と連絡先を交換すると、「じゃあな」と別れ、さっさと次の目的地に向かっていったのだとか。その見事さに、営業マンは唖然とするばかりだったそうです。

「たしかに、学生時代からせっかちな先輩でしたが、それにしても、なんだかつむじ風みたいでした」

なるほど、こうすれば「また今度」ではなく、「次はいつ」を設定できるというわけですね。私も機会があれば、この手をぜひ使ってみようと考えています。

保坂 隆

保坂サイコオンコロジー・クリニック院長

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