暑くなる前に登りたい「表丹沢」ロングルート! 春の空「展望登山」レポート

山頂から望む富士山。360度の大パノラマが楽しめる(撮影:山歩ヨウスケ)

気象庁によると、2023年の夏は観測史上で過去最高の気温を記録したそうだ。確かに思い出してみても、暑い夏だった。

では、2024年はどうなるのだろうか。気象庁が3月に発表した「向こう3か月の天候の見通し」によれば、4月〜6月は暖かい空気に覆われやすいため、全国的に気温は高いと予想されている。2024年の夏は、2023年よりも猛暑とならないことを願いたい。

冬季には標高の高いエリアでは雪が降る丹沢山地だが、例年4月には残雪期も終わり、雪のない山を楽しめるようになる。今回は都心からのアクセスもいい人気の丹沢エリアの山を紹介したい。

■都心から1時間30分、アクセスのいい人気の「塔ノ岳」

「三ノ塔(さんのとう)」から望む塔ノ岳。山頂には小さいが小屋が見える(撮影:山歩ヨウスケ)

塔ノ岳(とうのだけ)は、丹沢山地のほぼ中央に位置する標高1,491mの山で、登山口までのアクセスがいいことから「表丹沢エリア」でも特に人気を博している。山頂からの眺望は抜群で、360度の大パノラマを堪能できる。

また、塔ノ岳は「尊仏山(そんぶつやま)」とも呼ばれ、これはかつて山頂にあった「尊仏石(そんぶついし)」から由来している。なお、山頂に建つ山小屋の名は「尊仏山荘」だ。

塔ノ岳へのアプローチは「大倉尾根」から行くか、「表尾根」から行くか、の大きく分けて2つ。今回は表尾根から塔ノ岳を目指すルートを紹介する。

表尾根から塔ノ岳までのアプローチは「ヤビツ峠」からか、「菩提峠(ぼだいとうげ)」からになるが、ヤビツ峠からだと行程が1時間増える。日照時間の短い冬季に日帰りで行くには、少しでも短い時間で登ることができる菩提峠からのアプローチがおすすめだ。

東名高速を利用し、県道70号線を経由して菩提峠まで向かう。都心から登山口である菩提峠までは1時間30分ほどで到着だ。

■絶景を横目に山頂を目指す「表尾根ルート」

小刻みにアップダウンが続く表尾根。眺望を楽しみながら歩ける(撮影:山歩ヨウスケ)

菩提峠から塔ノ岳まではコースタイムで上りが約4時間、往復で7時間30分ほど。休憩なども含めると、8〜9時間はみておいた方がいい。日が長くなってきていても早朝の出発はマストとなる。

菩提峠から三ノ塔までは登りが続くが、そこから先はアップダウンが小刻みに繰り返される。三ノ塔からは眺望がよく、富士山や麓の街並みを眺めながら歩くことができる。

全体を通して眺望のよさが魅力の表尾根だが、登山道や木道が整備されているのもおすすめのポイントだ。

歩きやすい木道を歩く。しっかりと整備されているのでありがたい(撮影:山歩ヨウスケ)

なお、1か所だけ高低差のある鎖場があるので、そこは気をつけてほしい。

■要所に設けられた休憩スペース

筆者お気に入りの表尾根だが、塔ノ岳までの道のりは長い。菩提峠から、ニノ塔、三ノ塔、烏尾山(からすおやま)、新大日といくつものピークを越えてようやく塔ノ岳に辿り着く。行動時間が長くなると、体力も必要となるが、ペースよく歩くためには適度な「休憩」が不可欠。

表尾根には休憩を取りやすい場所が多く、要所にベンチが設けられている。長時間の休憩をしなくても、ザックを背負ったまま4〜5分座り、行動食と水分を取ることでオーバーヒートすることなく歩き続けられるはずだ。

休憩できる場所がないと、ついつい歩き続けてしまい、結果バテてしまう。こんな失敗を筆者も重ねてきたが、表尾根を歩く時は適度に休憩をとり、最後までバテずに歩くことができるようになった。

■木ノ又小屋を越えたらゴールはもうすぐ。塔ノ岳山頂へ

長い道のりを歩き、目の前に迫る塔ノ岳山頂(撮影:山歩ヨウスケ)

菩提峠からおよそ3時間30分、木ノ又小屋を通過するとゴールの塔ノ岳はもうすぐそこだ。最後の登りは急で、ここまで歩いてきた体には堪える。急ぎたい気持ちを抑え、ペースを意識しながら山頂を目指そう。

塔ノ岳山頂に到着。目の前には、360度の大パノラマが広がる。富士山や箱根の山々だけでなく、麓の湘南エリアや相模湾も一望できる。

丹沢山地は山の景色だけでなく、海の景色も楽しめるのが魅力だ。山梨や長野の山では、水平線はこんなに間近には見えない。

海の景色に加えて、関東平野の眺望もよく、また丹沢山地の主峰・蛭ヶ岳(ひるがたけ)も望めるので、ぜひ行った時の楽しみにしておいてほしい。

塔ノ岳の山頂は広いスペースがあり、多くの登山者が昼食を楽しみながら景色を満喫している。気に入ったスペースを見つけて楽しんでほしい。

菩提峠から塔ノ岳へは長時間の山行となる。時間配分などの計画はしっかりとしてほしい。危険な箇所も少なく、見晴らしもいいのでおすすめなのだが、行動時間が長くなるため経験者と行動することをおすすめしたい。

5月からの向こう3か月の天候の見通しでは気温は高いと予想されてはいるが、山での油断は禁物だ。塔ノ岳は標高1,400mを超えるので、防寒対策をしっかりとして出かけてほしい。

〈登山ルート〉
菩提峠駐車場⇒(1時間20分)⇒三ノ塔⇒(30分)⇒烏尾山荘⇒(1時間)⇒新大日⇒(1時間5分)⇒塔ノ岳⇒(50分)⇒新大日⇒(1時間)⇒烏尾山荘⇒(40分)⇒三ノ塔⇒(1時間)⇒菩提峠駐車場

●塔ノ岳

住所:〒243-0112 神奈川県愛甲郡清川村煤ヶ谷

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