女子ラグビー原わか花の人生を変えた留学経験 体型を変えたフィッシュ&チップス【パリ五輪を目指す注目女子アスリートの履歴書】

原わか花(C)共同通信社

【パリ五輪を目指す注目女子アスリートの履歴書】

原わか花
(女子ラグビー/24歳・東京山九フェニックス) 第3回

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「楽園のような環境だった」というニュージーランドの留学を終え、高校2年の秋に帰国した原は、厳しい現実に直面した。

「めちゃくちゃ太っていたんです……。現地の揚げ物『フィッシュ&チップス』が大好きすぎて練習前後や寝る前、暇さえあれば食べていました。海外の選手は体が大きいから、一緒にいると自分の体形を意識することもなくて。周りの選手からは『もっと食べて体を大きくした方がいいよ』なんて言われていたくらいですから。帰国してからアレ? って(笑)」

体形に変化こそあったが、持ち前の走力は健在だった。すぐさまレギュラーを掴み、主力として活躍を始めた。「留学してラグビーの基礎を学んでいなかったらどうなっていたか……」と原。

ニュージーランドで初めてラグビーの楽しさを知り、日本でも同様に面白さを見いだすことができた。試合経験を積み重ね、3年夏には日本代表合宿に初招集されるまで急成長。その頃になると体はすっかり絞られていた。

卒業後は自己推薦入試で慶大に合格。このタイミングで、祖父にラグビーをしていることを初めて打ち明けたという。

「かなり勇気がいりました。バレーをしているとウソまでついていましたからね。でも、『ラグビーをしていたからこそ、慶大に行けたんだ』と開き直ってもいいんじゃないかなと。それで、『慶大に受かりました。実はラグビーをしていて、それで……。今までウソついていてごめんなさい』と伝えると、『そうか! 慶大か! じゃあ、(入学準備など)全部おじいちゃんがやってあげる!』と大喜びしてくれたんです。ラグビーのことはまったく触れられませんでした。たぶん慶大のインパクトが上回ったのだと思います。結構拍子抜けというか、びっくりというか、ホッとしました」

入学後は学校のラグビー部には入らず、現在所属する東京山九フェニックスに入団。そうして4年時には東京五輪の大舞台に立った。12カ国が参加したこの大会で結果は5戦全敗の最下位だった。ショックは大きかったという。

「それまでの合宿には20人近くが参加していて、代表に登録されるのは12人だけ。せっかく代表に選ばれたのに不甲斐ない結果になってしまい、他の人に申し訳なくて」

パリ五輪を目指す決心をしたものの、一度切れてしまった緊張の糸を張り続けることは容易ではなかった。

「2022年のW杯後、やっぱり諦めて、引退することを決めました」と、当時の心境をこう切り出した。 (つづく)

▽原わか花(はら・わかば) 2000年1月6日、新潟県新潟市生まれ。石見智翠館高(島根)でラグビーを始め、3年時に日本代表入り。慶大に進むと、学校の体育会には所属せずに東京山九フェニックスに入団。21年東京五輪に出場した。好きな食べ物は新潟県の特産品であるサーモンの塩辛と白米。

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