【5月15日付社説】消滅可能性自治体/国主導で一極集中是正せよ

 「消滅可能性自治体」に分類されたか、されなかったかで一喜一憂する問題ではない。国が存続できるかどうかが問われている。

 民間有識者らでつくる「人口戦略会議」が、2050年までの推計に基づき、地方自治体の持続可能性を分析した報告書をまとめた。若い女性の減少に伴い人口が大幅に減り、将来的に消滅の可能性があると試算された自治体は全国の4割超の744に上った。

 10年前に公表された同様の報告書で消滅可能性が指摘された自治体は896だった。数字上は改善しているものの、その主な要因は外国人の増加だ。少子化基調は変わっていない。

 前回の報告書の後、政府は「地方創生」を掲げ、自治体に補助金を交付して東京一極集中の是正や少子化対策などを促してきた。ただ、移住などの社会減対策に重きが置かれ、地方自治体間で人口の奪い合いを招いた面があるのは否めない。結果として出生率の向上につなげる効果は乏しかった。

 再び鳴らされた警鐘は、人口減少に歯止めをかけられない政府に向けられたものだ。政府にはもっと危機意識を持ち、日本全体の少子化対策に取り組む責任がある。

 人口戦略会議は若者をはじめとする人口の流入が多い一方で、出生率が低い自治体を「ブラックホール型自治体」と名付けた。東京23区の多くや京都市、大阪市など25の自治体が該当した。

 地方の人口が大幅に減ると、他地域からの流入に依存している自治体も将来的に衰退する。大企業の本社や政府機関が特に多く立地し、ブラックホール型自治体が集中する首都圏にとっても、地方の人口問題は人ごとではない。

 地方の人口の安定が首都圏などの持続可能性を高めることを踏まえ、政府は都市と地方の発展のバランスを取るべきだ。東京一極集中を是正し、進学や就職を機に若者が大都市に流出する社会構造を変えることが求められる。

 県内は、東京電力福島第1原発事故の影響が残る浜通りの13市町村を除く46市町村のうち、約7割の33市町村が消滅可能性自治体に分類された。前回の報告書では、原発事故の影響で本県全体が公表の対象外だったため、消滅可能性が示されたのは初めてとなる。

 これまで取り組んできた少子化対策が、結婚やゆとりある子育てなどを望む若者の希望をかなえるものとなっているか、県や市町村は試算を基に検証することが欠かせない。洗い出された課題を直視し、若者が人生を設計できる地域社会をつくることが重要だ。

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