【東北新幹線】福島始発実現の好機(5月15日)

 JR福島駅につながる山形新幹線の「新アプローチ線」を設ける事業は順調に進んでいる。2026(令和8)年度末に使用開始されれば、新幹線の安全性が一層向上し、運行時間も効率化される。現在は通過している「はやぶさ」の停車や「やまびこ」の福島駅始発・終着化も夢ではなく、地元が実現を求めて声を上げる好機と言えるだろう。

 アプローチ線は現在1本で、上下線ともに福島駅下りホームの14番線に乗り入れている。山形新幹線に遅れが生じると東北新幹線のダイヤにも影響を及ぼすため、上りホームの11番線に上り専用のアプローチ線を新設して運行を円滑にする。これにより、東京方面へ向かう上り列車が東北新幹線の下り線を通過する「平面交差」も解消される。

 利用者にとっても乗車ホームが分かりやすくなる利点がある。東京方面への新幹線は上り、下り両ホームから発車し、間違いやすいと指摘されてきた。上りホームへの一本化は長年の懸案だっただけに喜ばしい。

 福島駅は、ホームの利用が見直されるなど転換期を迎えているように思える。駅としての価値や魅力をさらに充実させ、利用者を増やしていくためにも「やまびこ」の福島始発や「はやぶさ」の停車を実現できないか。ダイヤの編成次第で物理的に可能とみられる。

 新幹線の拡充は、ビジネス客や観光客の利便性向上につながる。福島駅は東京から約1時間30分、仙台から約25分と立地に恵まれ、通勤や日帰りが可能な距離だけに効果は大きい。

 ただ、東北新幹線全体でみると、停車駅の増加などは速達性の低下をもたらす。JR東日本に検討を求めるに当たっては、利用者増に向けた考え方や、列車の必要性を具体化させるなどの丁寧な準備が大切になる。

 福島駅には東北線、奥羽線、福島交通飯坂線、阿武隈急行線が乗り入れ、交通の要所となっている。中心市街地への人流を生み出す玄関口でもあり、鉄道の充実はまちづくりの追い風になる。行政、経済団体などが一体となり、市民を巻き込んで新幹線の活用策を議論すれば、空洞化が問題になっている駅前のにぎわいを取り戻すヒントも見えてくるはずだ。(角田守良)

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