コンビニ50年

 歌人の小池光さんが1980年代に詠んだ一首がある。〈抒情せ(じょじょう)よセブン・イレブン こんなにも機能してゐるわたくしのため〉。深夜も開いているコンビニが、せわしない労働者に思えたのかもしれない▲共に休みなしで働く身、君の気持ちも語ってみなよ。そんな意味だろうか。コンビニは画一的に商品が陳列され、情趣に乏しいと思えばこその「抒情せよ(感情を語れよ)」だろう▲日本で初めて、本格的なコンビニチェーンが東京・豊洲にできて、きょうで50年になる。「画一的」から、業界内で商品の質を競う時代へ。大きく変容したと感じる人も多いだろう▲コンビニの研究本が多い吉岡秀子さんの「セブン-イレブン 金の法則」(朝日新書)からは、商品開発者たちの“熱量”が伝わる。その一つ「温かい麺類」への挑戦には長い歴史があると知った▲2000年ごろは生麺にお湯をかける形。次に、お湯を入れて湯切りをし、またお湯を注ぐ形。さらに、ゼラチン状のスープをレンジで温める形…と書けばたやすいが、試行錯誤は数知れない▲最近は高齢の人に向けた食品も豊富に並ぶ。抒情の口を閉ざしたのは昔の話、今は世代を問わない生活インフラ(基盤)になり、消費者とじっくり対話する“50歳”になった。どこか人の成長を思わせる。(徹)

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