月収78万円・59歳の勝ち組サラリーマンが「思い出の詰まったマイホーム売却」→「賃貸アパートへ引っ越し」を決意した、定年後、65歳で手にする「唖然の年金額」

(※写真はイメージです/PIXTA)

出世街道を順調に歩んでいる「勝ち組サラリーマン」の給与額は、平社員とは雲泥の差。周囲から羨望の眼差しが注がれることでしょう。現役時代の給与が大きく影響する年金額もたっぷり受給でき、さぞかし余裕のある老後ライフが待ち受けている…と思いきやそうではないようです。覗いてみましょう。

月収78万円・59歳の勝ち組サラリーマンの悲鳴「たった、これっぽっち……」定年後、65歳で手にする「唖然の年金額」

登場人物
ゆめこさん……大正時代からタイムスリップしてきた26歳女性。なぜか、現代社会にめちゃくちゃ詳しい。全文太字部分

ワイ(以下、ワ)……ゆめこさんの白い飼い犬。お菓子好き。ミーハー。
コバヤシ サトシ(以下、サト)……60歳、大卒大企業のサラリーマン、定年後の収入源に不安を抱える。
・コバヤシ サチエ(以下、サチ)……60歳、コバヤシ サトシの妻。専業主婦、丁寧な暮らしに憧れる。

サト:俺の名前はコバヤシ サトシ。大学を卒業した後、丸の内にある大企業に入社した。43歳で係長、48歳で課長、そして52歳で部長と順調に出世を重ねてきた! 年齢を重ねるごとに給与もどんどん上がっていき、今じゃ年収は1,300万円以上だ!

ワ:サトシさんは出世街道を歩んできたんだね! 会社員のお給料は出世するのとしなのとでは、どれくらい違うの?

平均的な収入で考えると、役職の無い平社員から係長に昇進した場合、年収は80万円ほど上がります。

係長から課長に昇進した場合、さらに250万円弱、

課長から部長に昇進した場合、さらに180万円ほど年収が上がるとされています。

ワ:おおおーそんなに違うんだね~!

サト:そうさ、俺は文字通りの勝ち組サラリーマン。絵に描いたようなサクセスストーリーをたどってきた!

俺の親父はうだつのあがらない万年平社員だった。卵を入れるパックを主戦力とするプラスチック容器を製造する小さいメーカーに勤めていたんだが、親父の給与は一向に上がらず…いつまで経っても低所得。なんとか大学まで入れてくれたが、俺の進学した私大は学費がとにかく高い! 大学時代は自分でも学費を稼ぐ必要があった。

俺は内部進学の金持ち同級生が外車を乗り回したり、女の子とレストランでデートしたり、華やかなキャンパスライフを送るのを横目に、日々バイトに明け暮れた。正直羨ましくて仕方がなかったぞ!!

ワ:うんうん。

そんな俺も今じゃマンションを買って外車を乗り回し、何不自由のない生活をしている! 若い時の悔しさをバネに、ハングリー精神も仕事の切れ味も、苦労知らずのボンボンには負けない自信がある!

……だが……俺は今、自分の将来が不安で仕方ないんだ…。

ワ:順風満帆な会社員人生を歩んできたのに、サトシさん、何が心配なの?

サト:定年後の暮らしが心配で仕方ない。俺は今年60歳となり定年退職を迎える。これを機にリタイアするつもりだ。だが年金をもらえるのは65歳から…。つまり、5年間は収入のない空白の期間ができてしまうんだ……。

昨今は60歳の定年退職後も職場の再雇用制度を活用するなどして、働き続ける方は多くいらっしゃいます。ですが、収入は現役時代より減ってしまい、「収入の壁」にぶち当たります。これまで給与が右肩上がりに上昇していく経験をしてきたエリートサラリーマンは、こたえるようです。

ワ:ふむふむ。

サト:俺は今、部長だから年収は約1,300万円とお高めだ。

だが、定年後再雇用制度を利用して働くとなると役職手当もなくなくなる。年収は一気に550万円くらいになっちまうんだ。

定年後も正規社員として雇ってもらえるだけ有難いという気持ちもあるが、収入が半分以下になると聞けば不安にもなるだろ? 俺の人生では給与は上がり続けるものであって、下がったことなど一度もない。なのにいきなり、半額以下だなんて…とほほ。

ワ:なんと! 半額以下とはつらいね…。

それに65歳からの年金額のことも考えないといけませんね。

サトシさんの場合はサラリーマンですから、国民年金と厚生年金を加算した金額を受け取ることになります。計算方法はこのようになります。

1:国民年金「年金額×(保険料の納付月数÷480ヵ月)」 2:厚生年金
・加入期間が2003年3月までの場合
「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」

・加入期間2003年4月以降の場合
「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」

計算してみると、サトシさんの場合、厚生年金は月15万円、国民年金と合わせると総額、月21万円ほどということになりますね。

サト:て、ことは再雇用で働いてた時の給与から、年金生活に入るとさらに3割も収入が減るのか~

ワ:収入が減っちゃうのってすごく心細いね……

サト:月収で考えると78万円から21万円までとは…まさに滑り落ちるようだな。年収で考えると5分の1か…はぁ。貯金を切り崩して生活していくしかなさそうだな。

ワ:ゆめこさん、こんな時ってどうしたらいいのかな?

そうですね、収入が減るということを考えて生活水準を下げていく必要があるかもしれません。

まずはもとの生活を見直していきましょう。

生活の見直し

1:家計の収支を明らかにする 2:住み替えを検討して出費を減らす 3:必要のない家具や家電を断捨離する

サト:そんなアドバイスを受けて、俺も自分の生活を見直してみることにした。

俺は今はマンションに住んでるんだが、このあいだ地震が起きた時にエレベーターが止まってしまうというトラブルがあったんだ。今はまだ元気だが、年をとって緊急時に階段で上り下りしなくちゃいけないってのはかなりのネックだ。

それに子どもがいたときは手狭に感じてたマンションだが…今や子どもたちが使ってた玩具やスポーツ用品が押し込んである物置きと化した部屋もあり、妻と俺だけでは持て余していることが分かった。

若い時の憧れで買った海外のクラシックカーも修繕費や維持費が結構かかる。

俺は妻とも家計について相談してみることにした。

サト:なあサチエ、実はマンションを売って引っ越そうと思ってるんだけど、どうかなあ。

サチ:そうねえ…子どもたちももう自立してるし、ここは私たちには大きすぎるわよね。毎日の掃除だけでも、今の私ではくたくたになっちゃうわ。

サト:思い切ってこのマンションを売却して安い賃貸に引っ越した方が、これから修繕費を払い続けるより、経済的に余裕ができると思うんだ。ちょうど近所にバリアフリーの2人暮らし向けのマンションもあるみたいだし、老後の生活を考えたらそっちに住む方がいいんじゃないかな。

サチ:実はね、私もちょっと考えていたことがあったのよ。

サト:え? なんだい?

サチ:私、持ち物を最小限に留めるミニマリストに憧れてるの。極力ものを家に置かない生活なら掃除や片付けも今よりずっと丁寧にできると思うの。

サト:ええ!そうだったのか?

サチ:最近、インターネットでみたんだけどねシンプルな生活っていうのも素敵だと思って。でもあなたは新しいものが好きでしょう? 物を減らす、なんて言ったら嫌がるかと思ってたの。

サト:そんなことないさ! 俺だってこれからは収入が減るんだから、収入に見合った生活を考えてたところだ。それでミニマリストってどんな生活をするんだい?

そんなわけで、俺は妻と一緒に使ってない物を減らして、賃貸のアパートに引っ越すことにした。思い出の詰まった子どもたちの学用品も、思い切って養護施設や発展途国の生徒たちに寄付した。マンションを売った金額と俺の退職金、それに再雇用制度での収入で楽しく暮らしていけそうだというのが分かってきた。

マンションを売った金額と俺の退職金、それに再雇用制度での収入でも案外楽しく暮らしていけるというのが分かってきた。

ものが少ない暮らしにもすっかり慣れた。爪切りをどこにやったかといちいち探さなくてもいいっていうのはいいもんだぞ。

毎朝どのシャツを着て、どのスーツにネクタイを合わせるか迷う時間もなくなった。この時間がなくなっただけで、朝の準備の時間に随分と余裕ができたように思う。

サチエはクローゼットの洋服が少なくなったおかげでほこりがたたなくなり、掃除機をかけるのが格段に楽になったと喜んでいた。

ワ:サトシさん、新しい生活が気に入ってるみたいだね!

今までの生活とはがらりと変わりましたが、手放したことで手に入れたものがあったようですね。

収入の壁に備えよう!50代からできる対策とは?

サトシさん、自分に合った生活ができそうでよかったですね。

ワ:ちょうど奥さんとも話が合ったから対応が早かったね!

夫婦で同じ方向を向いて生きていけると心強いですね。

さて、前半でも話題に上がっていた『収入の壁』ですが、皆さんは備えられていますか?

サトシさんが行った収支の見直しはとてもよい手段だと言えますが、他にもできることはあるんですよ!

ワ:そうなの? ぜひ教えてほしいな!

それでは、「50代でもまだ間に合う、収入の壁に備えるためにできること」を簡単に3つご紹介します。定年退職後の収入源に不安がある方は必見ですよ!

まず1つ目は貯金です。

ワ:王道だね!

そうですね。王道ではありますが、実はあまり貯金が得意ではない…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

たとえば、今の生活から毎月1万円でもコツコツ貯めていれば1年で12万円、5年で60万円と貯まっていきます。

毎月同額を積み立てるのは大変ですが、着実に貯蓄が増えることで精神的にも安定します。

今までコツコツ貯めてこれなかった方は、これを機に毎月貯金してみてはいかがでしょうか。

ワ:は~い!

2つ目は、資産運用をすることです。

日本はインフレが進み、物価高の波が押し寄せ、円の価値が下がり続けています。そんな時代に、お金を寝かしておくだけではもったいないです!

ぜひ資産運用を視野に入れてみてください。

初心者の方は政府が推奨する新NISA制度などの利用から始めてみるのがいいでしょう。

ワ:でも投資って、損するのが怖くてなかなか手が出せないよね…

そんな方には「iDeCo」がおすすめです!

ワ:聞いたことあるけど、どんな制度なの?

iDeCoは通称個人型確定拠出年金と呼ばれる、老後の資産運用におすすめの制度です。毎月自分で選んだ銘柄をつみたてて運用する年金、というイメージですね。

2022年5月以降から積立期間が65歳まで延長され、75歳まで受け取りを遅らせられるように制度が変わりました。

そのため、50代でも長期運用のメリットを享受できるようになり、定年退職間近の方でもはじめやすくなったんですよ。

ワ:50代からでもメリットがあるのはありがたいね。

ただ、50歳以上60歳未満で加入した場合、通算加入者期間が10年に満たないと、受け取れる年齢は繰り下がるので注意が必要です。

すぐにお金を必要とする場合は、よく考えて挑戦することをおすすめします。

3つ目は、気の合う仲間がいるコミュニティに参加してみることです。

定年退職後、再雇用として働くことになった場合、収入は減るうえにやりがいが感じられなくて生き生きと働けなくなる可能性があります。

そんなときに気が合う仲間がいるコミュニティに参加してみましょう。知らなかった話題や新しい価値観に触れることができて視野が広がります。人とのつながりは何よりの財産です。

ワ:人と話すと感性が豊かになるよね!

そうですね。職場や家族以外のコミュニティからは、日常生活では出合えない刺激を受けられますよ。

また、ビジネスや経済に関心の高い人が集まるコミュニティなら、稼ぐための新たな知見が深まったり、情報収集に役立ったりするでしょう。

50代でもまだ間に合う、収入の壁に備えるためにできること

1:貯金 2:資産運用をすること 3:気の合う仲間がいるコミュニティに参加

以上、3つが「50代でもまだ間に合う、収入の壁に備えるためにできること」でした。

備えあればうれいなしなので、早めに対策しておきましょう!

【高所得者は注意】月収78万円・59歳の勝ち組サラリーマンの悲鳴「たった、これっぽっち...」定年後、65歳で手にする「唖然の年金額」【老後の生活】

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