26歳女性デザイナーを救った“国産名車” 故障しがちな愛車は「ずっと乗り続けていきたい」

日産サニーの25周年記念モデルが人生を変えた【写真:ENCOUNT編集部】

彼氏からツボを押さえた誕生プレゼント カセットテープの懐メロがBGM

交通事故に遭った経験から抱えていた自動車への「トラウマ」を克服し、すっかりクルマ好きに――。仕事で疲弊していた時、人生のピンチを救ってくれたのは、自分より年上の日産サニーだった。クルマに詳しい彼氏と一緒にカーライフを満喫しており、「2人の彼氏がいるみたいです(笑)」。20代の女性オーナーを笑顔にしてくれた愛車物語を聞いた。(取材・文=吉原知也)

落ち着いた黒の車体が印象的な1991年式の日産サニー FB13。25周年記念モデルだという。懐かしのセダンの持ち主は、26歳の女性デザイナーだ。

手に入れるまでに、紆余曲折があった。数年前、仕事で疲れ果てていた。ふと、『頭文字D』の漫画を読んでみた。自動車に情熱をかけて打ち込む主人公たちの姿に感銘を受け、「何か頑張れるものを見つけたい」と、自分の心に火が付いた。

実は、自動車は苦手なものだった。学生の頃、自転車に乗っていたら車にひかれた事故被害の経験がある。両親はクルマ好きだが、それまではほとんど興味がないまま過ごしてきた。

それが、どんどん関心を持つようになり、不思議と吸い寄せられた。「マニュアル免許を取ってみよう」。一念発起し、免許を取得。新しい仕事に就き、人生の再スタートを切った。

さあ次は、愛車探しだ。近所の中古車販売店に行ってみた。当初は、日産ブルーバードやプリメーラを想定していた。ブルーバードにも試乗してみた。ここで、運命の出合いが。なんとなく目に入ったセダン車があった。「これ、なんですか?」。それがサニーだった。

「サニーは25周年記念モデルだと聞いたのですが、ちょうどその時、私も25歳で、なんとなく運命を感じたんです、いいなって。それで購入を決めました」。2022年の秋のことだった。

さらに輝きを増していく人生。マニュアル車の運転を少しずつ慣らしていっている。頼もしいのは、自動車関係の仕事をしている27歳の彼氏の存在だ。「彼から的確なアドバイスをもらいながら運転しています。『もっとブレーキを滑らかに』とか、まるで教習所に通っているみたいです(笑)」。自慢の優しい彼氏からツボを押さえた誕生プレゼントが。「サニーのステアリングをもらったのですが、なぜだか入らなくて(笑)。カーイベントに参加する時に車内に飾っています」。ちょっとおちゃめなカップルだ。

それに、80年代、90年代の音楽・文化が大好きで、チェッカーズや工藤静香のカセットテープを車内BGMに。ケンウッドのスピーカーを取り付け中だ。「私の中で『当時を再現』がテーマなので、うちの親に昔はどうだったのかを聞いて反映させています。例えばごみ箱など、細かい部分にこだわりたいんです」。“レトロな進化”を追い求めている。

これまでトラウマに感じていた「自動車」は、今では人生の相棒だ。「苦手なものでも苦手のままにしないこと。興味を持ったらガンガン突き進むこと。そうすると視界が大きく開けると実感しました。人生が楽しくなりました」とうなずく。

ちょこちょこ故障してしまうが、彼氏と一緒に、時には自分で直しながら乗っている。「ずっと乗り続けていきたいですし、これからもっともっと思い出を作っていきたいです。あっ、それに周りにサニー乗りの方がいないので、街で見かけたらぜひ声をかけてください(笑)。当時のお話をたくさんお聞きしたいです!」。最高の笑顔を見せた。吉原知也

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