アングル:大手投資企業が商業用不動産投資を拡大、銀行の撤退尻目に

Iain Withers

[ロンドン 14日 ロイター] - 銀行が商業用不動産への融資を引き揚げている一方で、不動産価格の急落に歯止めがかかると見込んだ欧米の大手投資企業が投資を拡大している。

米国の資産運用会社PGIM、ラサール、ヌビーン、カナダのブルックフィールド、英M&G、シュローダーズ、アビバ、仏アクサの各社はロイターに、不動産投資の拡大を計画していると明かした。

大半は物流、データセンター、賃貸用アパート、高級オフィス市場への貸し出しに注力しており、一般的なオフィス物件は依然不振が続いている。

アクサの代替投資部門を率いるイザベル・シェママ氏は「現時点で当社が最も力を入れている投資と言うと、恐らく不動産デット(与信)になる」と語った。

ラサール・インベストメント・マネジメントは、向こう2年間で不動産デット投資を40%増やして約76億ドルとするのが目標だと説明した。

世界の商業用不動産業界は、今なお世界金融危機以来で最悪の不況から抜け出しておらず、特にオフィス物件は不振だ。しかし代替投資を手がける企業は、最悪期は過ぎ、相場の回復に伴って魅力的なリターンが狙えると踏んでいる。

ヌビーンの世界デット責任者、ジャック・ゲイ氏は「不動産サイクルの歴史を振り返ると、一般的にサイクルの底で実行したローンが、返済遅延率は最低でスプレッドは最高となる傾向がある」と説明した。

ファンド企業によると、銀行の資本基準厳格化や、昨年の米地銀破綻によって銀行の商業用不動産融資が減ったこともあり、ファンドの投資余地が広がった。

プライベートエクイティ企業も参入しており、関係筋によるとアポロ・グローバル・マネジメントは初の欧州不動産デット・ファンドを立ち上げ、年内に投資額10億ユーロを目指している。ゴールドマン・サックスなど大手銀行の資産運用部門も商業用不動産市場を狙っている。

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