水原一平裁判で記者46人が抗議 判事が異例謝罪「私も以前記者でした」「ごめんなさい」

無言を貫いた水原被告(ロイター)

【カリフォルニア州ロサンゼルス14日(日本時間15日)発】ドジャースの大谷翔平投手(29)の銀行口座から約1700万ドル(約26億6000万円)を盗んで不正送金したとして銀行詐欺などの罪に問われた元通訳、水原一平被告(39)が罪状認否のためロサンゼルス連邦地裁に出廷した。手続き上の理由から形式的に無罪を主張、4分ほどで終了した。報道陣の問いかけには無言だった。一方、法廷に報道陣の入室が認められなかったことでAP通信の記者が「報道の自由の侵害だ」と記者46人の署名とともに裁判所に抗議するなど大荒れだった。

黒のスーツにノーネクタイの白いシャツ姿の水原被告がマイケル・フリードマン弁護士とともにカリフォルニア州ロサンゼルスの連邦地裁に黒塗りのバンで到着したのは午前11時過ぎだった。待ち受けていた約80人の報道陣らに囲まれるも無言を貫き約200メートル先の建物まで歩いて移動し、一般の入場者と同様のセキュリティーチェックを受け、同11分に6階の法廷に入室した。

同43分にジーン・ローゼンブルース判事が水原被告の名前の発音を確認されると「Yes,that’s right(はい、合っています)」と返答した。大陪審の権利の放棄書に署名したことに「Yes, I did(はい、署名しました)」と回答。

ローゼンブルース判事から大陪審の権利の放棄の意味、すでに司法取引がされていることや今回が形式的な罪状認否であり今後裁判で主張を変えられることなどの説明があり、3回ほど「Yes,ma,am(はい、判事)」と答えたのち、同46分「この訴状を認めますか?」と問われ、「Not guilty(無罪です)」と無罪を主張した。

同被告は検察との司法取引で有罪を認めているがローゼンブルース判事に法定刑の上限が禁錮1年以上の重罪について有罪答弁を取り扱う権限がないことから、この日は形式的に無罪を主張。次回審理で有罪を認めることになる。

司法省によると、水原被告が有罪答弁をする日程は今後決定され、判決の言い渡しは数か月後になる可能性があるという。刑期は最長で禁錮33年だが、連邦地検は司法取引に基づき、刑の軽減を申し入れる。

同判事は今後カリフォルニア州サンタアナのジョン・ホルコム判事が担当することを発表。6月14日午後1時(同15日午前5時)に現状確認会議を行うことを伝え、罪状認否を終了した。やりとりはわずか4分ほどだった。

罪状認否を終えた水原被告に約80人の日米報道陣が「大谷さんには何を言いたいですか」「ファンにひと言」「お金はどうするつもりだったのか」などと矢継ぎ早に質問を浴びせたが無言。フリードマン弁護士は「今日はコメントしません」とだけ話した。水原被告は終始無表情で前を向いたまま生気のない様子で無言を貫くと、黒塗りのバンに乗り込み連邦地裁を後にした。

水原被告が公の場に姿を見せるのは初出廷した4月12日(同13日)以来とあって、日米の報道陣が連邦地裁近くに集合。コメントを取ろうと移動する途中でテレビのカメラマンが階段で転倒したりと、かなりのカオス状態だった。

また、罪状認否は4月12日の初出廷と同じ裁判所の6階の法廷で行われたが、傍聴を希望した報道陣は約50人ほどと、初回の60人超よりも少なかった。しかし、警備スタッフが安全性を懸念し、入室を拒否。音声のみが聞こえる隣の別室に案内されたことでAP通信の記者が「報道の権利の侵害だ」と抗議文書を書き、集めた署名とともに裁判所に抗議をする事態に発展した。抗議書に日米合わせ46人が署名した。

結局、入室は認められず、水原被告の罪状認否の前に判事がマイクを通し「警備スタッフの判断で、安全を考え、報道陣は隣の別室に入ってもらいました。私自身も以前ロサンゼルス・タイムズ紙の記者だったので、皆さんのお気持ちはよく分かりますが、私の判断ではありません、ごめんなさい」と謝罪する異例の展開になった。ドタバタは続きそうだ。

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