増加する大腸がんの怖さ…症状は本当にあてにならない 気になれば速やかに検査が賢明 医師が語る

近年、増加傾向にある大腸癌(がん)。教科書的には様々な症状があります。排便時の出血、便秘、下痢、便柱の狭小化、腹部膨満感、食欲減退などです。排便時の出血などは、外痔核、内痔核、切れ痔をお持ちの方は、頻繁にみられます。便秘の方は、便秘と下痢を繰り返すということを多々認めます。便を軟らかくする緩下剤を飲むと便柱の狭小化を認めます。その他の症状も実は日常で良く認められる症状なのです。

よく患者さんに「胃癌の症状は?」「大腸癌の症状は?」などと聞かれますが、早期癌であれば無症状というのが正解です。例えば、逆流性食道炎、胃潰瘍や感染性胃腸炎などの良性の疾患であれば、比較的早期に症状が出ます。しかし、癌は進行しても症状が出にくいのです。

先日、かつてアイドルとして活躍していた立花理佐さんが大腸がんとなった際、痛みや血便はありながらも、以前患った痔がぶり返したと思い、検診に行くのが遅れたと、インタビュー記事で話されていたのを読みました。

自分で判断することは危険ですが、お尻からの出血の時、大量に綺麗な血液を認めた時には、確かに痔からの出血の可能性があります。直腸癌などを伴っている場合は、綺麗な血液というよりも濁った血液を少量確認できます。また、粘液が混在していることもあります。毎日排便を認めていたのに、便秘、下痢になったり、食生活を変えていないのに便が細くなったなどの場合も要注意です。

ある意味、症状は本当にあてにならないので、気になることがあれば信頼できる病院を受診して、速やかに検査を受けることが賢明です。便の中の潜血を調べる検査も非常に有用ですが、2回とも陰性で半年後に大腸癌でお亡くなりなった方もおられます。痔の診断を得て治療していたのにも関わらず、その少し奥に癌がある場合もあるのです。

一般的に辛いとされている大腸内視鏡も以前と比べると比較的容易になっていて、ポリープの大きさ、形にもよりますが、日帰りでポリープ切除をしている医院もたくさんあります。大腸ポリープを早期に切除することで、大腸癌の発生率を抑えることが可能です。積極的に大腸内視鏡検査をうけることは、年々増加している大腸癌による死亡率の減少に繋がります。

◆谷光利昭 兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。

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