『テニスの王子様』許斐剛、旅先でもサイン色紙に1時間 “神対応”の作家だからこそファンが考えたいこと

漫画からアニメ、ミュージカルと多くのメディアで人気を獲得してきた『テニスの王子様』シリーズの作者・許斐剛氏が5月15日、自身のXで「サイン色紙」について語った。

近年で漫画家のサイン色紙や原画は芸術的価値が高まっており、オークションサイトでも海外から高額の入札が相次ぐなど注目が集まっている。その人気から贋作の問題も生じており、ネガティブな話題も少なくない(参考記事:鳥山明 訃報報道後、オークションサイトでサイン色紙の贋作が続々出現?)が、幸運にもサイン色紙を手に入れたファンの大半にとってはお金に代え難い宝物であり、もし好きな漫画の作者に出会うことができたなら、サインをお願いしてみたいと思う人は多いだろう。

そんな漫画ファンが心に留めておきたいのが、今回のポストだ。許斐氏は前提として「旅先でも漫画家はサインを頼まれると、やっぱり絵があった方が嬉しいだろうなとつい描いてしまう」という。そして、ファンが「簡単でいいですよ」と言ったとしても、「プロとしてそういう訳にはいかない」ため、1枚のサイン色紙を書くのに1時間近くかかってしまうとのことだ。例えばプライベートの時間、それもリフレッシュに訪れた旅先で1枚につき1時間の仕事を強いてしまうかもしれない……と考えると、サインをお願いするにしても状況を見つつ、「小さくない負担をかける」ことを認識した上で、“ダメ元”で相談する感覚でいたほうがいいだろう。

もっとも、許斐氏は気軽にサインを求められることに対して迷惑だと言っているわけではまったくなく、『テニスの王子様』の主人公・越前リョーマの名台詞を絡めながら、「嬉しいけど結構大変… まだまだだね」とまとめている。

そもそも許斐氏はサービス精神に溢れた作家だ。例えば2023年8月には、結婚式を控えて「大好きな跡部様にもご参列して戴きたかったのですが、大切な試合中ですので怪我だけはしないようにと遠くから応援しています!」とつぶやいたファンに対して、許斐氏は「あ~ん? 参列するぜ」という“らしい”セリフを添えて、人気キャラクター・跡部景吾が正装した姿のイラストをポスト。粋な“神対応”に多くの反響があった。サインを求めたとき、気にせず断ることができる作家なら気兼ねなくアタックできそうだが、ファン思いの作家の“断りづらさ”も慮ることができるとなおよさそうだ。

もちろん、サインを求められることを喜ばしいと思う作家も多いはずで、単純に「迷惑になりそうだから」とファンが気持ちを抑えることがいつでも正解とは言い難い。少なくとも、周囲に人が集まってサイン会が始まってしまいかねないような状況(『テニスの王子様』レベルの人気作であれば十分に考えられることだ)では自粛したり、断られても悪く思わないような姿勢で、作家へのリスペクトを持って考えたいところだ。

(小原良平)

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