23区なのに無人駅!?「大師前駅」はなぜ駅員不在なの? 無人駅となった理由や「不正乗車」されないのか解説

大師前駅とは

東京23区唯一の無人駅である「大師前駅」は、足立区の東武大師線にあります。東武大師線が開業したのは1931年です。この時期は東武鉄道線、西武鉄道線、東急電鉄、阪急電鉄などの施設も次々と敷設された鉄道の黄金期でした。

東武大師線は、西板線という名前で西新井駅と大師前駅の総路線距離1.1kmとして誕生し、1968年の大師前駅の移転により現在の総路線距離は1km、乗車時間はたった2分の路線です。

2両編成の列車で、10分間隔で運行しています。東武鉄道の旅客駅は205駅であり、都内29駅の中でも唯一無人駅なのが東武大師線の大師前駅です。

乗降人員

「大師前駅」の乗降人員は、2022年度で1日平均1万1944人です。有人駅である東上線「森林公園駅」が1万1719人、伊勢崎線の「羽生駅」が1万1399人であるため、この2駅よりも大師前駅行きの乗降人員のほうが多いと分かります。

また「森林公園駅」は10車両編成の車両が出発しており、「羽生駅」は秩父鉄道との乗換駅です。「羽生駅」は特急列車の一部も停車する主要駅のため、東武大師線の大師前駅は無人駅ながら利用者数は極めて少ないとはいえません。

無人駅の理由

「大師前駅」が無人駅である理由には、路線計画の破綻が関係しています。東武大師線は西新井駅、大師前駅、江北駅、新鹿島駅、足立新田駅、赤羽駅、小豆沢駅、志村3丁目駅、若木西代駅、上板橋駅の10路線で総距離11.6kmでの工事が計画されていました。

しかし、計画が組まれた翌年に関東大震災が発生し、計画は少しずつ変更せざるを得なくなりました。復興計画と土地売買が重なったことや路線予定地の市街地化などによって、設計費が予定よりもはるかに高額になったため、計画は白紙になってしまったのです。

なお、当初は西新井駅の「西」と上板橋駅の「板」をとって「西板線」と命名されていました。運行が開始されてから16年間は「西板線」として運行し続けていましたが、1947年に「東武大師線」に改名されました。16年も西板線を名乗っていることから、東武電鉄は西板線の完成を目指していたのでしょう。

無人駅で不正乗車はされないのか

現在、無人駅での不正乗車が問題視されています。そこでJR九州は、2023年7月に小倉駅の170円切符の販売を中止することを発表しました。

小倉駅では最短区間にあたる170円切符が1日平均300枚売れるのに対し、隣駅の西小倉駅では30枚、約1割しか回収されていないのです。またJR九州の駅全体の6割を占める無人駅で下車しているとの目撃情報が多く寄せられています。

つまり、一番安い切符を購入して不正乗車が行われている可能性があるのです。

大師前駅の場合、自動券売機も自動改札機もないため、無人でそのままホームに入ることが可能です。初めての人は戸惑いを感じるでしょうが、大師前駅は1つ隣の西新井駅で管理されています。

大師前駅から西新井駅へ行く場合は、西新井駅の改札口で精算します。反対に西新井駅から大師前駅に行くときは、西新井駅の乗り換え改札口で精算するのです。

東武大師線は大師前駅と西新井駅の1区間しかないため、西新井駅での管理が可能です。そのため、大師前駅は無人駅ではありますが、JR九州のような不正乗車は少ないでしょう。

2駅を1kmで結ぶ短い旅をしてみませんか?

全長1kmで2駅を結ぶ東武大師線は、レトロで昭和感あふれる東京23区で唯一の無人駅です。大師前駅が無人駅でも、精算は西新井駅で一括管理されています。

不安を感じても、西新井駅の改札を通れば不正乗車になる心配もありません。東武鉄道の思いが詰まっていますので、都内でここでしかできない短い旅をぜひ1度体験してください。

※ 2024/5/15 記事を一部、修正いたしました。

出典

国土交通省 駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関するガイドライン策定の経緯

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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