旧ジャニーズは被害者置き去りで再出発 元社長の藤島ジュリー氏が現在も実質オーナーの厚顔

藤島ジュリー景子氏(C)日刊ゲンダイ

故ジャニー喜多川氏による連続児童性加害で、旧ジャニーズ事務所が公の場で謝罪してから14日で1年が経過。ジャニー氏の姪で2代目の藤島ジュリー景子氏(57)は経営の第一線から退くとしていたが、現在も実質オーナーの座にとどまり、グループ会社4社で会長職に就いていることが明らかになった。役員報酬が支払われ、また一部のグループ会社の株主でもあるとスマイルアップ社の山田将之CCOが日本テレビの報道番組の取材に答えている。

ジュリー氏は昨年5月、約1分間の動画で謝罪したが、性加害については「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」とコメント。これについて、元所属タレントの筆頭、近藤真彦からも「嘘はダメ。知ってるでしょう」などと批判され、さらに国連人権理事会の専門家や特別調査委員会が事実とすると一転してこれを認め、「全ての関係会社からも代表取締役を降りる」と宣言した。さらにメッセージではあったが、こんな覚悟を表明したものだ。

「ジャニーズ事務所を廃業することが、私が加害者の親族として、やり切らねばならないことなのだと思っております。ジャニー喜多川の痕跡を、この世から一切、なくしたいと思います」

痕跡はそのままに

現在、いずれの会社でも経営にはタッチしておらず、順次退任の方向というが、スマイル社は取材に「専門家の助言を受けながら、検討を進めている」などとし、今後も株主であり続ける可能性があると暗に認めた。言行不一致の数々はいくつも指摘されているが、あるベテラン芸能リポーターは「最も大きいのが、どうみてもジャニー氏の痕跡をなくさない方向にシフトしていること」と言う。その通りではないか。タレントのマネジメント業務などを引き継ぐスタートエンターテイメント社は本格始動し、東京ドームで大々的にイベントを開催。テレビ局も「タレントに罪はない」などといって事件の風化を進め、なし崩し的に元に戻そうとしているからだ。

一方で、被害者補償や救済について、スマイル社の東山紀之社長(57)は「一日も早く多くの人を救済できるよう今後も誠心誠意、補償業務に取り組みたい」と表明したというが、どうか。

「算定基準も金額も未公表とし、被害者にもそれに従うように仕向けていますが、4パターンくらいにあてはめているようです。マスコミでの露出が多い、もっというと、うるさい相手には多く提示し、黙らせようとしていると受け取る関係者もいます。提示額も0円からというので驚きました」と、ジャニーズ問題を深く取材するワイドショー関係者はこう続ける。

「1800万円の提示に不服申し立てをした『当事者の会』副代表の石丸志門さんには、民事調停で争うということのどこが誠心誠意の補償業務、救済なのでしょうか」

被害申告した「当事者の会」メンバーらは、ネットなどで度重なる誹謗中傷を浴びせられ、「当事者の会」を立ち上げた平本淳也氏は体調を崩し代表を辞任。勤め先の会社でのポジションを失い、生活危機に陥っている者もいれば、家族の身にまで危険が及び、海外への移住を選択した者も。また自死に追い込まれた者もいる。こうした深刻な2次被害が明らかにもかかわらず、東山氏は「(誹謗中傷に)言論の自由もある」とBBC放送のインタビューでコメント。批判が殺到すると、BBC放送がコメントを歪曲して伝えたとクレームをつけた。平本氏がこう言う。

「(自らの)性被害から44年、実名告発から36年目、この1年は何もない混沌とした空間をさまよっていた長い時間と比べたらとても短く感じます。BBC放送(の取材班)を連れてきて、国連に手紙を書き、特別チームに提案し、ジュリーさんとヒガシにはいくつもの要望を呈し、これまでになかった大きな変化があった。何をもってゴールとするか、まだ見えてはいませんけど、何より被害者が救われることを目的とした支援や活動はまだまだ続くので尽力してまいります」

被害者たちの終わりなき苦悩はそのままに、喉元過ぎればで再出発は絶対に許されない。

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