懲りない自民党「政活費+機密費」で年間30億円の裏金温存 規正法改正でも目に余る往生際の悪さ

3人で締めて65億円以上(自民党3代幹事長の左から、二階俊博、茂木敏充・現幹事長、甘利明の3議員)/(C)日刊ゲンダイ

ミゾは埋まらなかった。岸田首相が14日昼、官邸で公明党の山口代表とランチ会談。今国会中の政治資金規正法の改正に向けた話し合いは平行線をたどった。山口代表は会談後、従来と変わらず、野党との協議も重視する考えを強調した。

与党合意など些末なこととはいえ、公明がソッポを向く気持ちは分かる。この期に及んでも、自民は政策活動費(政活費)の使途公開に慎重で「裏金化」をやめるつもりなどサラサラないのだ。

「公明党にはいわゆる政活費に該当する支出はありません。あえて『廃止』を訴えなかったのは、自民党との合意に向けた配慮です。改正案の大枠では議員による使途公開で合意したものの、使途の公開範囲で折り合わず、具体策は依然として不透明。泥舟に乗せられるのはごめんです」(公明党関係者)

自民党幹部に渡る政活費は、領収書不要で使途報告の義務がないブラックボックス。事実上の裏金だ。大半は選挙に浪費しているのが定説で、例えば幹事長が応援演説に行くたび、各陣営に「陣中見舞い」として現金を持っていくという。

在任5年で約50億円が使途不明の二階元幹事長だけが悪目立ちしているが、21年衆院選時にその任にあった甘利前幹事長も、たった35日間の在職中に計3億8000万円の政活費を手にしていた。1日あたりの裏金は軽く1000万円を超える。

2022年の政治資金収支報告書によると、自民の政活費は計14億1630万円。うち7割近くが茂木幹事長に渡っていた(別表)。茂木氏は甘利氏の後任に就いた21年11月4日以降、2カ月足らずで計2億4520万円の政活費を受け取っており、22年までにせしめた裏金は約12億円に上る。

16年8月の二階の幹事長就任以来、甘利氏、茂木氏と3代にわたり、総額65億円以上もの裏金が渡ったことになる。幹事長の「力の源泉」と呼ばれるゆえんで、なるほど温存したくなるわけだ。

自民の政活費は国政選挙の有無でバラツキはあっても、毎年10億円台半ばで推移。衆院選があったピーク時の17年には19億円を超えていた。選挙に掴み金を好き放題、使えば公正な選挙もヘチマもないが、温存される選挙のための裏金は他にもある。内閣官房報償費(官房機密費)だ。

血税が原資の機密費まで選挙に流用

中国新聞は9日、13年の参院選で安倍元首相が自民の公認候補に現ナマ100万円を渡した疑いを1面トップで報じた。このカネも選挙運動費用や収支報告書に記載せず、やはり裏金化。同紙は機密費から出た可能性を指摘したが、翌10日には再び1面トップで、国政選挙の陣中見舞いに機密費を使ったという元官房長官の証言を伝えた。

この報道について、林官房長官は14日の会見で機密保持を理由に事実確認を避けた。機密費は使途の報告どころか、記録の義務すらない「裏金中の裏金」だ。年約12億円は国費で賄われている。本来は国内外の情報収集などに使用すべきカネで、いち政党の選挙のための裏金に使えば目的外使用に他ならない。

「自民党を取材した人間からすれば陣中見舞いに100万円は当たり前。原資が政活費なのは常識です。その上、選挙のバラマキに血税が原資の機密費まで流用するとは、もっての外。次の衆院選で野党は機密費のデタラメな使い道をオープンにすると公約に掲げるべき。その点だけでも政権交代の意義があります」(政治評論家・本澤二郎氏)

政活費と機密費を合わせるとザッと年間30億円。反省ゼロの自民から選挙の裏金を没収するには、下野させるしかない。

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