よみがえりの物語を熱演 大斎原で小栗の劇、和歌山・田辺市

情感込めて「小栗判官ものがたり」の劇を繰り広げる出演者(和歌山県田辺市本宮町で)

 「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録20周年を記念し、和歌山県田辺市本宮町の熊野本宮大社の旧社地、大斎原(おおゆのはら)で11日、奉納劇「小栗判官ものがたり」の公演があった。地域住民による劇団が「よみがえり」の物語を熱演した。

 地域の物語を、地域の人が地域で演じて活性化につなげようと活動する「劇団たなべ座」が主催。同市などには、かつて身分の低い人々や病に苦しむ人々が来世への希望を求めて歩いた道が「小栗街道」として残っており、その精神が次世代へ受け継がれることを願って奉納した。

 劇は、照手姫と恋に落ちた小栗判官が謀略によって毒殺され、餓鬼阿弥となるが、多くの人の情けを受けながら険しい道のりを本宮の湯の峰温泉まで引かれてきて、つぼ湯につかり、蘇生し、2人が幸せになるというストーリー。

 「たなべ座」や本宮町の「三里劇団」のメンバー、子どもら約40人が演じ、九鬼家隆宮司も熊野権現役で出演した。出演者は情感を込めて演じ、ライトに照らされた大斎原の舞台で幽玄な物語の世界が繰り広げられた。観客には外国人の姿もあり、拍手が湧き起こった。

 新宮市熊野川町の北イツ子さん(77)は「一生懸命演じられていて、物語の世界にすごく感動した」と話した。

 たなべ座の泉美也子代表(48)は「この場所で湯の峰にまつわるよみがえり伝説の公演をさせていただけたことが一番。劇を通じ、出演者やスタッフにも人生の中のよみがえりがあったと思うし、見た方々にも物語を通じてよみがえりを感じていただけたらうれしい」と語った。

 特別出演として、地元の大瀬太鼓踊保存会による「大瀬の太鼓踊」(国選択・県指定の無形民俗文化財)の披露もあり、観客を楽しませた。

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