ホームでの大一番の前にV逸のINAC神戸 元なでしこ「決め切れないのが優勝を逃した1つの要因」

千葉L戦で敗れたINAC神戸。この時点で優勝の可能性が消滅。試合後の整列では選手も悔しさをにじませていました(写真提供:WEリーグ)

女子サッカー・WEリーグのINAC神戸レオネッサは、12日の第20節ジェフユナイテッド市原・千葉レディース戦(千葉・フクダ電子アリーナ)で1-2と敗北。この結果、2試合を残して優勝の可能性が消滅し、三菱重工浦和レッズレディースの2連覇が決まりました。今季2敗目が痛恨の黒星となったINAC神戸の一戦について、元なでしこジャパンDF川上直子氏が、自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組で振り返りました。

【写真】元なでしこジャパンDFの川上直子氏

次節に浦和Lとの直接対決を残していたこともあり、逆転優勝に望みをつなげるためにはとにかく勝利が求められたアウェイ戦。前半からチャンスを作るも決め切れない展開が続いたINAC神戸は、ハーフタイム直前、千葉LのFW大澤春花選手にこぼれ球を押し込まれ、先手を献上してしまいます。

「試合の入りでは千葉Lがすごくよかった。プレッシャーも強くINACにきていたし、みんなこの試合に気合いが入っているなと感じた。一方のINACはシュートまでいくシーンは多かったが、『惜しい』『惜しい』が続いて、ちょっと『おやおや?!』となる展開にならなければいいなというところで、前半終了間際、相手右サイドからねばってクロスをニアであわされた。GK山下杏也加選手も1回はじいたが、相手・大澤選手の反応も速かった。INACとしては、ここはねばって、前半は0-0でいきたかった」(川上氏)

後半開始からベテランFW高瀬愛実選手(※「高」=はしごだか)を投入して反撃に出たINAC神戸。MF成宮唯選手がペナルティーエリア内でファウルを受けて得たPKを、高瀬選手が冷静に決めて、試合を振り出しに戻しました。しかし、勝ち越しまでには至らず、逆に85分、千葉Lの10番、FW鴨川実歩選手の技ありシュートがゴールに吸い込まれ、土壇場で失点。10分以上あったアディショナルタイムでの逆転もかなわず、今シーズン2冠の夢も、ここでついえました。

「INACは1-1でいけば最後に逆転(の可能性)というのは十分あったと思うが、数少ないチャンスで鴨川選手にビューティフルゴールを決められた。INACは(得点を)取りに行っていただけに、ガクっとなったが、それでも選手からは『次の浦和L戦までつないで、最終節まで可能性を残したい』という意気込みはすごく感じられた。でも、これがサッカーなのかなと。結局INACはシュート20本、ジェフは7本、そのなかでしっかり2本決められたのが痛かった」(川上氏)

今シーズンここまで、14勝4分け2敗のINAC神戸。勝てなかった6試合では、浦和Lとのアウェイ戦(第8節、1-1)、初黒星を喫したサンフレッチェ広島レジーナとのアウェイ戦(0-2)以外、いずれもシュート数では相手を上回り、そのうち千葉L戦を含む3試合では15本以上のシュートで攻め立てていました。それだけに、結果的には勝ち切れない試合の多さが、ここに来てチャンピオンチームとの大きな差となってしまいました。「決め切れないというところは、この試合の敗戦にもなった(つながった)し、優勝を逃してしまった1つの要因にもなったのかなと思う」(川上氏)。

「相手のほうが決定的なチャンスを決め切る力が上手だった」と、千葉L戦を振り返ったキャプテンの田中選手。引き分けの多さが(優勝を逃した要因として)響いたのかという記者からの質問に対しては、「前半戦の引き分けが、いまになって痛かった。チームとして成熟しきれていなかったところでのああいう結果だった。もったいなかった」と回顧。それでも、「一戦一戦こなしていくなか、このチームは確実に成長できているなという実感はできている」と、昨シーズンまでの主力が多く抜けたなかでも、優勝争いを繰り広げたチームに手応えもつかみつつあったよう。

「浦和Lはもともと成熟しているチームで勝ち方もわかっていて、戦い方もあるし、それがずっと落とさなかったところはリスペクトせざるをえないところ」と、優勝した浦和Lを称えた田中選手ですが、「今シーズン(優勝の可能性は)終わってしまったが、浦和Lとやれる機会があるので、そこにうまくモチベーションを持っていくしかない。応援してくださるファン・サポーターがいますし、そういう人たちに勝つ姿や、最後まで必死に戦う姿勢というのを見せるのがプロ。この負けをすぐには切り替えるのは難しいが、次の浦和L戦に向けては、全員で勝ちに向かってやっていくということを、キャプテンとして示していきたい」と前を向いていました。

また、ラジオ番組にはINAC神戸のファン・サポーターからもメッセージが寄せられ、「勝たないとダメな試合ということで選手にも知らず知らず負担になっていたのかも。せめて最終戦は勝って一矢報いたい。最後まで選手、チームを応援して、絶対に2位死守しましょう!」、「ファン・サポーターはもちろん悔しいが、選手やチーム関係者の悔しさは我々以上だと思う。次節はチャンピオンを相手に意地を見せてほしい!」、「いろいろあるとは思うが、まずはここまで戦った選手をはじめ、チームの皆さまに拍手を送りたい。今週土曜日は皇后杯のクイーンとして浦和相手に堂々と熱く戦ってほしい。このチームメンバーはノエスタで集うのは5月18日が最後。戦う選手たちを見守りたい」などエールが送られていました。

川上氏も、「優勝はなくなったが、レッズに勝たないと、INACは今シーズン、手応えがつかめないまま終わってしまうように思う。これからもずっとライバルになるチームに負けるわけにはいかないと思う」とコメント。INAC神戸にとって18日(土)のホーム最終戦が未来につながる重要な一戦になるという認識を示していました。

「神戸と浦和の試合はいま女子トップなので、レベルの高い試合が見られると思う」という、WEリーグ第21節、INAC神戸対浦和Lの一戦は、ノエビアスタジアム神戸で午後5時キックオフ予定。なお、試合後にはINAC神戸のホームゲーム最終戦セレモニーと、増矢理花選手の現役引退セレモニーも行われます。

※ラジオ関西『カンピオーネ!レオネッサ!!』2024年5月13日放送回より

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