【誰かに話したくなる豆知識】缶詰特有のレトルト臭を消せる「マスキング」ってなんだ?

缶詰特有の匂いをマスキングするための食材とは? (撮影:黒川勇人)

食べ物にはそれぞれ匂いがあるけど、缶詰には保存食ならではの匂いがある。食品業界で「レトルト臭」と呼んでいるもので、1つは加熱したサツマイモのような甘い匂い。もう1つは蒸れたような、こもったような匂いであります。

どちらも密封、加熱によって発生すると言われていて、缶詰だけでなくびん詰、レトルト食品でも感じられる。製法上、避けられないマイナス点ではあるのだけれど、じつは食べる前に「ある食材をちょい足しする」とかなり改善できるのだ。

ちょい足しのやり方は主に3通りあって、1つはより強い匂いで元の匂いを覆い隠す「マスキング」。2つ目は、匂いの元がアルカリ性なら酸性の食材を加える「中和」。そして、あえて同系統の匂いを足し、いい匂いを強調してマイナスの匂いを目立たなくする「同調」。最後の同調というのはぼくの造語だけど、これがやってみるとなかなか奥深く、とても面白い。

ちょい足しに使う食材は、ざっと分けると「油脂類」、「調味料」、「野菜その他」の3種類になる。それぞれ単独で使うこともあるし、組み合わせることでより効果を高めることもできる。今回は第1弾として、油脂類の使い方を紹介しよう。

■ちょい足しすることで調理したての風味に

油は食べ物の表面を覆うから、口に含んだらすぐにマスキング効果が分かる。なかでもゴマ油に唐辛子の辛味が溶け込んだラー油は、かなり優秀な油脂だ。その香ばしい匂いと辛味は、どんな缶詰であろうと、調理したてのような風味に変えてくれる。

例えばサバ缶などのみそ煮、しょう油煮にかけると、ゴマの香ばしさが魚臭さを抑え込んでくれる。タレ味のやきとり缶にかけても、同様の効果が得られる。

辛いのが苦手な人は、ラー油ではなくゴマ油を選べばよし。いずれにしろ、ゴマの香ばしい匂いが缶所(もとい勘所)であります。

■油でレトルト臭を打ち消すパターン

オリーブ油を使った組み合わせ例

ラー油やゴマ油と並んで効果を発揮するのがオリーブ油だ。とくにオリーブの実を絞ってろ過しただけのエクストラバージン・オリーブ油は、挽きたての樹木に似た鮮烈な匂いを持っていて、例えば肉類の缶詰の蒸れたようなレトルト臭を打ち消してくれる。

しょう油などの調味料と相性がいいのも嬉しい。例えばエクストラバージン・オリーブ油にポン酢しょう油を足すと、鮮烈さにうま味が加わった万能調味料に変身する。ツナ缶でサラダを作った時などのドレッシングに最高ですぞ!

■ミルキーな風味は魚にもコンビーフにも!

さらに、忘れてならないのがバター。乳製品特有の濃厚な風味を持っていて、匂いのマスキング効果も絶大だ。ただし多用すると飽きやすい味なので、「ここぞ!」という時に使いたい。

オススメしたい組み合わせは魚缶で、そのミルキーな匂いが魚臭さを抑え込んでくれる。魚缶にバターを合わせるのは意外かもしれないけど、例えばフランスにはオイルサーディンならぬバターサーディンの缶詰が存在する。

また、コンビーフや牛大和煮などの牛肉缶に合わせる技も激推ししたい。牛肉缶には畜肉臭さがあるけれど、その中に含まれる牛脂はバターに似たいい匂いを持っている。同系統のいい匂いを足して強調することで、別の匂いを抑え込む「同調」のテクニックであります。

このように、油脂類はそれ単独でもレトルト臭をマスキングする効果を持っている。今回紹介した他にも、ココナッツオイルやトリュフオイル、マカダミアナッツオイルなど、フレバーの違う油がたくさんあるので、ぜひ缶詰と合わせて試してほしい。

© 株式会社双葉社