スイスで花粉症増加 気候変動・大気汚染が背景に

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気候変動の影響で、スイスで花粉症患者が増加している。有症率は2割で、経済損失は最大で年間6900億円に上る。

スイス自然科学アカデミー(SCNAT)の14日の発表によると、気候変動により多くの植物の花粉放出時期が早まり、飛散量が多くなった。ブタクサなどの繁殖力が強くアレルギー性の高い植物も、気候変動で増殖している。

大気汚染も花粉症の蔓延に加担した可能性がある。SCNATによると、空気の質が悪いことにストレスを受けた植物は、より強いアレルギー反応を引き起こす花粉を生成する。大気汚染が人間の気道を損傷し、喘息や花粉症にかかりやすくなる面もある。

SCNATの調査では、1926年には花粉症を抱える人はスイス人口の0.8%だったと推定される。現在は約20%に増えた。花粉症患者は世界的に増加している。

患者の生活の質だけでなく、経済的にも影響が大きい。「スイスでは、年間10億~40億フラン(約1720億~6900億円)に上ると推定される」(SCNAT)。投薬・通院にかかる直接的な費用と、生産性の低下や仕事・学校を休むことによる間接的な費用の両方が含まれる。

研究にはスイス大気化学物理委員会や連邦気象台(メテオ・スイス)も参画した。

SCNATは気候変動や大気汚染の緩和や外来種の駆逐、地域社会での適切な植栽、警報システムなど、さまざまな花粉症対策を提案した。

英語からの翻訳:ムートゥ朋子

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