Netflix配信中の韓国ドラマ『卒業』に早くも歪曲騒動。一体何が問題なのか

韓国ドラマではこれまで、数多くの作品が韓国国内の教育現場の現実を描いてきた。

『SKYキャッスル』(2018年)や『イルタ・スキャンダル』(2023年)が名門私立や塾・予備校など「私教育の風土」を描いたとすれば、今年5月11日から始まった『卒業』は「私教育と公教育の対立」を皮肉った内容となっている。

ただ、その過程で教師を過度に否定的に描写し、公教育を無視するように描いているという視聴者の指摘も相次いでいる。

『卒業』は、ソウルで有名な大峙洞(テチドン)の学習塾街を背景に塾講師たちを描いたドラマだ。

主人公がいれば、その主人公と葛藤を経験する人物が登場するものだが、『卒業』の場合は塾講師を主人公とし、高校教師を対立する人物として描いている。

前者は、学生たちからの評価等級を維持するため忙しく働くスター講師ソ・ヘジン(演者チョン・リョウォン)であり、後者はプライドの高いチャンヨン高校の教師ピョ・サンソプ(演者キム・ソンイル)だ。

(画像=tvN)『卒業』ポスター

ソ・ヘジンとピョ・サンソプの間の葛藤は、チャンヨン高校の中間試験・国語第11問をめぐって、生徒の解釈と教師が考えた正解が交錯した状況から始まった。

シン・ギョンリムの詩『農務』に登場する「楽しい」という表現が、逆説的な状況のなかの表現という観点と、反語法という観点が衝突し、答えが重複したのだ。

ソ・ヘジンは生徒に異議申し立てをするように勧め、生徒たちも担当国語教師のピョ・サンソプを訪ねた。しかし、ピョ・サンソプは学生たちの異議申し立てを受け入れなかった。意義が受け入れられず落ち込む学生に、「挨拶をしないのか」と権威主義的な面も見せる姿もあった。

その後、保護者たちは塾を訪れ、この事実と悩みを打ち明けた。ソ・ヘジンは教科委員会を開くよう勧めたが、保護者たちはためらった。

結局、ソ・ヘジンは保護者になり代わってチャンヨン高校を訪ねたが、ピョ・サンソプは第11問に異議を唱えたソ・ヘジンが保護者ではなく塾講師であることに気づいた。

ピョ・サンソプはソ・ヘジンに叱り、彼女の肩を掴んだ。手出しするだけでは足りず、「なぜ公教育に逆らうのか?」と言わんばかりに「塾講師は寄生虫だ」と侮辱したりもした。教育者であるにもかかわらず、深刻な人格問題を露呈した。

(画像=『卒業』放送画面キャプチャー)

その後、学校側は生徒と保護者らの異議申し立てに対し、再試験を決定した。

自尊心に大きな傷を負ったピョ・サンソプはソ・ヘジンを再び呼び出し、自身の行動に許しを求めながらも「長い戦い」を宣言し、緊張感を与えた。2人は激しい神経戦を繰り広げ、教師と塾講師としての立場の違いだけを確認した。

このように、『卒業』は初回から私教育と公教育の尖鋭な対立を描いている。

作中では「学校はただ内申だけを取るところであり、先生は成績表を書いてくれる人だ」というセリフを通じて、崩壊してしまった公教育の現実をそのまま浮き彫りにした。作中の保護者たちも、教師ではなく塾講師のほうを信頼して従っている。

だが、ソ・ヘジンが直接学校に訪ねて異議を提起する部分は、教師の権利を侵害したという印象を残した。

崩壊した公教育の崩壊を訴えようと、ピョ・サンソプの性格を悪く描写した点も眉をひそめた。

放送を見た視聴者は懸念を示した。とある視聴者は「塾の講師が学校に来るなんて。このような構成は公教育をさらに崩壊させる」と反応した。

また、「試験の出題項目について塾講師が学校の先生に意見するのは一線を越えている」という反応も出てきた。

別の視聴者は、「塾講師の意見によって問題を再出題するのは理解できない」とし、「公教育に対して敏感なこの頃なのに、いくら虚構性のあるドラマだとしても、現実の学校のことを反映しなければならなかった」と指摘した。

なかには、「教師が出した問題を古いと表現する女主人公には好感を持てない」という意見も出た。

現職の教師たちも立ち上がった。5月13日、中等教師労組側は「ドラマ『卒業』の第1回の放送内容で、“高等学校再試験要求事件”と関連した内容に相当な遺憾を表わす」という立場を明らかにした。

中等教師労組は「該当内容に対する過度な作中描写と設定は、公教育の第一線で頑張る教師たちの士気を低下させ、国内だけでなく全世界の視聴者たちにも韓国の公教育現場に対する歪曲された見方を呼び起こしかねない」と問題を提起した。

続けて、「特定職業群に属する人々の人生と愛にスポットライトを当てるために、公教育の現場に対する誤解と二分法的思考を呼び起こすほどの過度な設定が、必ずしも必要だったのか疑問だ」とし、「放送以後、ユーチューブなどではすでに“暴言を吐く先生を圧殺する”、“出題エラー事態に素早く捕らえた”などの刺激的な題名のコンテンツが生成された。これは“恩師の日”を控えた公教育従事者の士気を低下させる」と指摘した。

また、作中でソ・ヘジンが再試験を要求する過程で「成績表に書かれたらどうするんですか」「受験のこともあるから大事にはするな」「修学能力試験から消えました。古いから」「学校に人質に取られているようもの。成績表を前面に出して教権を僭称するのが問題ですか」と発したセリフにも、厳しい指摘が相次いでいる。

韓国では放映開始直後から何かと騒がしいドラマ『卒業』。韓国では毎週土曜日・日曜日の21時20分からtvNで放映されており、日本ではNetflixで配信中だ。

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