全部わかる?「ネットミーム化」したバトル漫画の有名セリフと「元ネタシーン」を振り返る

ガンガンコミックス『鋼の錬金術師』第1巻(スクウェア・エニックス)

インターネット上で広がっていくネタ動画や面白画像のことを指す「ネットミーム」。これまでにブームを巻き起こしてきたネットミームには、漫画やアニメが元ネタになっているものが多い。SNSでは、これらのネタの元ネタのコマやセリフなどがアップされることもある。今回は、一昔前に大バズリしたレジェンド級ネットミームとその元ネタを、「バトル漫画」に絞っていくつか振り返ってみよう。

■汎用性の高いジョジョの名セリフ

全世界累計発行部数1億2000万部という驚異の数字を誇る荒木飛呂彦氏の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズは、連載開始以来、数々の流行を生み出してきた。

たとえば、「だが断る」。ただ断るのではなく、逆接の接続詞をつけることでより強い拒絶になるこの言葉を放ったのは、第4部『ダイヤモンドは砕けない』での岸辺露伴だ。

あるとき露伴は、噴上裕也のスタンド「ハイウェイ・スター」の罠によって、トンネルの部屋に閉じ込められてしまう。そこに主人公・東方仗助が現れるが、スタンドを警戒し部屋に入ってこない。

「仗助を誘い込めば助けてやる」と持ちかけるハイウェイ・スターに、露伴は、汗だくで「ほ…ほんとに… ぼくの“命”…は…助けてくれるのか?」と問う。そして次の瞬間、勝利を確信してニヤリとするハイウェイ・スターに対し、鋭い表情で放った一言が「だが断る」だ。

続くセリフ、「この岸辺露伴が最も好きな事のひとつは自分で強いと思ってるやつに“NO”と断ってやる事だ」も痺れるカッコよさである。

数々の名セリフを生んだ『ジョジョ』。ネットでもミーム化しているものといえば、ジャン=ピエール・ポルナレフのセリフ「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!」もそうだろう。

このセリフは、第3部「スターダストクルセイダース」で、ポルナレフが謎に包まれていたDIOのスタンド「ザ・ワールド」との体験を主人公・空条承太郎らに説明したときのもの。

この後に続く「おれは 奴の前で階段を登っていたと思ったら いつのまにか降りていた な…何を言っているのかわからねーと思うが おれも 何をされたのかわからなかった…」までがセットで、頭が混乱して言いたいことがまとまらない様子が見事に表現された名言だ。

他にも、「酒!飲まずにはいられないッ!」「てめーは俺を怒らせた」など、『ジョジョ』はミームの宝庫である。

■モブの一言だった「オレでなきゃ見逃しちゃうね」

冨樫義博氏の漫画『HUNTER×HUNTER』で有名なセリフといえば、「おそろしく速い手刀 オレでなきゃ見逃しちゃうね」だろう。

これは、「ヨークシン編」で一度だけ登場した名もなき殺し屋の一言で、強者感漂う自信たっぷりなセリフ回しとあっさりやられる咬ませ犬っぷりのギャップがウケ、一躍ネットを駆け巡った。連載は2000年のことなので、24年も前のセリフがミーム化したわけだ。

彼はマフィアが雇った殺し屋の一人で、監視カメラのチェック中にクロロ=ルシルフルがネオン=ノストラードを気絶させる瞬間を見抜いた。その素早さに「おそろしく速い手刀 オレでなきゃ見逃しちゃうね」とほくそ笑み、「久しぶりに血が騒ぐぜ」と、クロロに戦いを挑むのだった。

モノローグでの「仲間だお前は…オレと同じ殺人中毒者」など、ここでも強者っぽい雰囲気を出すが、クロロの「密室遊魚」で生きたまま体を食われ、哀れな姿になってしまった。

■悲しいエピソードから生まれた「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」

荒川弘氏の漫画『鋼の錬金術師』に登場したショウ・タッカーが放った「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」も長く使われたミームだ。しかし、元ネタはかなりショッキングである。

国家錬金術師のタッカーは人語を話す合成獣(キメラ)のパイオニアだが、それは妻を合成するという闇深い経歴によるもので、人外にされた妻は「死にたい」と言い自害していた。近年成果が上がらず焦りを感じた彼は、ついに娘のニーナと犬のアレキサンダーも合成獣にしてしまう。

家を訪れたエドワードは、二人がいないことを、合成獣が言った「お」「にい」「ちゃ」の言葉で全てを察し、「資格をとったのはいつだったっけ?」「奥さんがいなくなったのは?」と彼に問う。

続けてエドが言った「もうひとつ質問いいかな ニーナとアレキサンダーどこに行った?」に対する答えが「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」である。悲しいことにニーナはその後、元に戻る事も出来ずスカーに殺されてしまう。

■使いたくなる『BLEACH』のセリフ

久保帯人氏の漫画『BLEACH』もまた、ミームが多く生まれた作品だった。愛すべき悪役・藍染惣右介が生み出した「憧れは理解から最も遠い感情だよ」や「あまり強い言葉を遣うなよ 弱く見えるぞ」などは、カッコつけながら言ってみたいセリフ、ナンバーワンである。

そんな『BLEACH』の中でも特に登場回数が多く汎用性の高かったミームといえば、「何…だと…?」だろう。このセリフは、使うキャラも幅広く「何だって…?」「何だと…」など言い回しの派生も多い。

作中では技が効いていないときや、キャラが驚いたときなど、ありとあらゆるシーンで使われている。ネット上で使うときも同様に、驚いたときなどに用いられていた。ファンの中には「何…だと…?」の回数をカウントする人もいたほど、話題性があったセリフである。

次々と誕生している漫画由来のネットミームたち。元ネタをたどると、意外なシーンで使われていることもあって面白い。セリフは知っているけど元ネタシーンを見たことがないという人は、ぜひ一度チェックしてみてはいかがだろうか。

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