大手広告代理店を「早期リタイア」した68歳男性…定年した友人の「安定収入」に焦ったワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

現在68歳のAさんは、50歳で早期退職しフリーランスとして働いた後、65歳で完全リタイアしました。年金収入に不安を感じるAさんは、友人Bさんの安定した生活を知り、自身の老後資金について見直しを開始。貯蓄を取り崩しての生活が可能であるかどうかを確認し、支出の見直しや追加収入の検討を始めました。

定年後「年金生活」を送るAさんと早期リタイアを選んだBさん

現在68歳のAさん(男性)は、大学卒業後、大手広告代理店に就職しました。30歳で結婚し、2人の子どもをもうけましたが、長時間労働が原因で家庭内での時間が減り、50歳で早期退職を決意しました。その後はフリーランスとして働きながら家庭と仕事のバランスを保ち、65歳で完全にリタイアしました。

Aさんは現在、妻と都内のマンションに住んでいます。子どもたちは既に独立し、自身の家庭を持っています。

そんなAさんには、大学時代の友人・Bさんがいます。Bさんは企業を経営していましたが、45歳で会社を売却し、早期リタイアを選びました。Bさんも妻と2人暮らしです。

2人は、お互いの定年後の生活について打ち明け合いました。

「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」

Aさんは定年後、老齢基礎年金として年間78万1,200円(月額6万5,100円)、老齢厚生年金として年間92万4,000円(月額7万7,000円)、合計で年間170万5,200円(月額14万2,600円)を受給しています。

一方、Bさんは自営業だったため、老齢基礎年金として年間78万1,200円(月額6万5,100円)を受給し、また早期リタイア後も株式投資などで収入を得ているそうです。

厚生労働省の『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、65歳以上の男性の老齢厚生年金受給権者の平均受給月額は16万7,388円、国民年金の平均受給月額は5万6,316円です。AさんとBさんの受給額は、この平均と比較してもやや高めです。

Bさんは、老齢基礎年金に加え、株式投資や不動産収入などで年間約200万円の収入を得ています。合計すると、年間278万1,200円(月額23万1,767円)の収入を得ていることになります。

この話を聞いたAさんは、自身の老後資金について不安を抱き、ファイナンシャルプランナーのもとへ相談に行くことにしました。

「私の収入は年金だけです。これからの生活が心配です」

Aさんが訴えたのは、「Bには年金以外の収入があるが、私の収入は年金だけです。これからの生活が心配です」ということです。

そこで、Aさんの年金受給額と今後の生活費についてシミュレーションがおこなわれました。

老後の収入と支出のバランス

Aさんは年金として年間170万5,200円(月額14万2,600円)を受給しています。Aさんの現在の月々の支出は約20万円です。このため、毎月約5万7,400円の赤字が発生しています。この赤字分は退職金や貯蓄で補っていますが、これが続くと不安が増すのも無理はありません。

Aさんは現在、退職金や貯蓄として約2,000万円を保有しています。これらを取り崩していけば、まだしばらくは大丈夫ですが、長期的には支出を見直すか、収入を増やす方法を考える必要があります。

老齢基礎年金と老齢厚生年金の計算方法

老齢基礎年金は、全ての加入者が同額を受け取る基本的な年金で、AさんもBさんも同じ金額を受給しています。一方、老齢厚生年金は給与に比例して計算されるため、Aさんのように長期間働いていた場合は受給額が高くなります。

Aさんの場合、老齢厚生年金は年間92万4,000円(月額7万7,000円)です。これに老齢基礎年金を加えた合計が年間170万5,200円です。

貯蓄を取り崩しても90歳まで安心…シミュレーション結果

Aさんの支出が月々約20万円、年間で約240万円です。年金受給額が年間170万5,200円なので、年間約69万4,800円の不足が生じます。これを貯蓄で補うと、現在の貯蓄額2,000万円は約28年で尽きる計算になります。Aさんが現在68歳なので、96歳までこの計算でいけることになります。

老後の安心を確保するために必要なこと

Aさんは、いくつかのアドバイスをもらいました。まず、支出の見直しを行い、無駄な支出を削減すること。また、健康である限りはアルバイトなどで追加収入を得る方法も検討してみるとよいということです。

さらに、最新の年金制度や税制についての情報を常に把握し、必要に応じて見直しを行うことが重要です。

Aさんはこれらのアドバイスを受けて、「今後の生活に対する不安が少し和らぎました。早期リタイアはできませんでしたが、これからもできる範囲で収入を増やす方法を考えます」と話しました。

年金や老後資金に関する情報は常に変わります。定期的に確認し、必要に応じて専門家に相談することが、安心した老後を過ごすためのポイントです。

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