新潟に勝って2連勝【ヘグモ浦和が上昇気流に乗るために必要なこと】(2)「覚醒した」秘蔵っ子、65分の「追加点」と69分の前田直輝の「3点目」

ヘグモ監督の秘蔵っ子であるサミュエル・グスタフソンが真価を見せ始めた。撮影/原壮史(Sony α1使用)

明治安田J1リーグ第13節、アルビレックス新潟(以後、新潟)対浦和レッズ(以後、浦和)の戦いは、2-4で浦和が勝利を収めた。2連勝となった浦和にとって、今後の戦いで大切なことは、自分たちよりも下位にいる順位のチームに負けないことだ。そうしなければ、上昇気流には乗れない。したがって、5月15日第14節の京都サンガF.C.戦と5月19日第15節のジュビロ磐田戦の連戦をどうやって切り抜けるのかが重要になってくる。浦和の今後の戦い方を占う意味も込めて、新潟戦での得点と失点の場面をピックアップして具体的に試合を分析しよう。

65分の追加点は、ヘグモ監督の信頼篤いサミュエル・グスタフソンがフリーでペナルティエリアに侵入してきて決めた。この場面も、1点目と同様、システムの噛み合わせ上、フリーになれる立ち位置の優位性を利用している。渡邊がボールをバイタルエリア前に進んだときに、浦和には4つの選択肢があった。
(1)渡邊がそのままドリブルしてミドルシュートを打つ。
(2)左サイドにパスを出す。
(3)右サイドにパスを出す。
(4)FWにパスを出す。
ここではペア・マティアス・ヘグモ監督が目指す「ボールホルダーの選択肢を増やすことで得点力が高まる」サッカーの実現がなされている。
選手がボールを持ったら周りの選手がランニングをしてスペースを作って、そこに別の選手が入り込む。トレーニングの成果が出始めている。

グスタフソンは「なぜフリーで侵入できたのか?」

なぜ、グスタフソンがフリーでペナルティエリアに侵入できたのか? まず、サンタナが左サイドにランニングすることで、右SBの藤原奏哉がつられてしまい、カバーが遅れる。さらに、グスタフソンについていかないとならないセンターハーフ(以後、CH)の秋山裕紀が歩いていることが問題だ。また、CB舞行龍ジェームズが前に出てくる必要がない。もう少し我慢してポジションを守るべきだった。彼が前に出ててきたことで、右ウインガーの前田直輝が、彼がいるべきポジションに入っていくので、左SBの早川史哉がついていかなければならなくなった。もはや守備の崩壊と言える。
新潟の左サイドには誰もいない状態になってしまった。1人の選手が少しの判断ミスや、あるいは「さぼっている」ように見える動きをすると、全体の守備が崩れてしまうのだ。
69分の前田の得点は、まず、新潟が攻撃に入ったときに、ボールを奪われた場面からスタートしている。新潟のボールの奪われ方が悪かったことと、攻守、守攻の切り替えが遅いことが失点の原因になっている。CHの秋山がもっと全力で戻らないとならない。せめて、シュートコースを狭めるくらい、前田にプレッシャーをかけにいかないといけなかった。
また、遠藤がこの場合は前に出てサンタナにプレスに行けば、前田へのスルーパスを防げたかもしれない。なぜならば、遠藤がサンタナに寄せていくことで、遠藤のポジションが空いて、秋山が「戻らないとならない」ということを知らせることになるからだ。
さらに、遠藤がサンタナに全力で寄せにいくときに、サンタナの右方向を「切る」やり方をすれば、彼は左サイドにしかボールを出せなくなる。やはり、サンタナに対してノープレッシャーだったことが問題だった。一瞬一瞬の判断が試合の勝ち負けを決定づけてしまうのである。

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