京都三大祭りの一つ「葵祭」  斎王代と平安装束の行列に目が行きがちだが… 実は欠かせない「葵」が激減 危機に瀕した1400年の伝統を守れるか

京都、三大祭りの一つ「葵祭」が15日に行われました。 およそ1400年続く伝統行事ですが、祭りに欠かせない「葵」が激減し、ピンチの状況に。伝統をつなぐ舞台裏に密着した。

■歴史ある祭りのシンボルがピンチ

15日午前10時半、京都御所を出発した葵祭の500人の大行列。 十二単を着た祭りのヒロイン「斎王代(さいおうだい)」、そして、艶やかな平安装束の参列者。

みんなが身に着けているのが「葵」の葉っぱだ。

葵祭は祇園祭・時代祭と並ぶ京都三大祭りの一つで、五穀豊穣や平和を願い、1400年以上続くお祭り。 京都御所から上賀茂神社まで、約8キロを練り歩くす。

観客:源氏物語の六条御息所を思い出して。これで物語は作られたのかなと思って感慨深かった。
観客:すごい迫力がありました( Q.頭に葉っぱが付いていましたが)はいはい!見ました。
観客:なんで付いているんですか?

葵祭のシンボル「葵」の葉。実は今、ピンチに陥っている。

上賀茂神社 第205代 高井俊光宮司:ここは境内の森。昔は葵がたくさん生息していた。ところが、現在ではそれがなくなってしまった。葵祭に使う葵が不足している状況。

京都の上賀茂神社周辺では、「フタバアオイ」が自生する「葵の森」があったが、気温が高くなりすぎたり、野生動物に食べられたりしたことで、15年ほど前にほとんど姿を消してしまった。

もともと、葵は神様とつながる神聖なもので、古くから和歌などで「あふひ」と書かれた。 「ひ」は「神様」を意味し、葵は「神様にあう」という意味をもつ植物だ。さらに、徳川家の家紋に使われているのも「葵」だ。

葵祭の日を描いた江戸時代の絵巻物では、軒先に葵が飾られている。上賀茂神社のシンボル、葵を飾って神様を迎える祭りを行ったことが起源とされる「葵祭」。 祭の装飾には、1万4000本もの葵が必要だが、自生のものだけでまかなうことはできない。

■子どもたちが育てた葵 「葵祭の支えになっているのが誇らしい」

どうすれば、1400年の伝統を守ることができるのだろうか?

葵プロジェクト 大江薫子理事:この植物はヒマワリのように太陽が好きではありません。日陰が大好きなんです。

上賀茂神社の近くの小学校で、「葵祭」について教える大江薫子さん。

葵プロジェクト 大江薫子理事:なぜ葵を飾るのでしょうか?
小学校6年生の児童:神社の社紋がフタバアオイだから。

地域の小学校や企業などで、フタバアオイの苗を育ててもらい、伝統を継承していこうと、大江さんたちは17年前に「葵プロジェクト」を立ち上げた。

葵プロジェクト 大江薫子理事:地域の皆さんにフタバアオイを育てていただいて、葵祭に飾るフタバアオイを作ってもらったらどうかと。同時に文化を伝承できるお手伝いができたらなと。

上賀茂小学校6年生:フタバアオイ、ちゃんと育てていっぱいできるといいな。
上賀茂小学校6年生:水やりをさぼらずにちゃんとやりたい。

5月のある日。上賀茂神社に運び込まれたのは、子どもたちが育てていたフタバアオイ。

上賀茂小学校6年生:日に当たらない所を葵が好んでいるというのを聞いて、日が当たらない所に植えている。
上賀茂小学校6年生:フタバアオイを植えて、葵祭の支えになっているのがとても誇らしいです。

葵祭の前日、「フタバアオイ」は桂の枝にからませ、「葵桂(あおいかつら)」という飾りになった。

葵プロジェクト 大江薫子理事:大人になったら葵祭に出たいと思いますか?
上賀茂小学校6年生:はい。思います!

そして、葵祭本番の15日、みんなの思いが詰まった葵の葉は…

上賀茂小学校6年生 大岩幹大さん:葵桂、きのう作った。実際に使用されていて、ちょっとうれしい。

葵プロジェクト 大江薫子理事:1年間みんなで作ってきたので、やっと実ったと手応えを感じています。行列もきれいですが、フタバアオイのことも見てもらえたらうれしいです。

1400年続く祭りの裏側には、伝統を「陰」で支える人たちの思いがあった。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年5月15日)

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