金原ひとみ×ゆっきゅん 「音楽で頭をまっさらな状態に」する必要性

言葉を扱う仕事の人ほど音楽で頭をまっさらにすべき!

ゆっきゅん(以下、ゆ):金原さんって絶対音楽好きですよね?

金原ひとみ(以下、金):好き!

ゆ:『ハジケテマザレ』でもクラブで爆踊りするじゃないですか。あのシーンは最高でした!

金:この間、女性作家5人くらいの会があって、踊れる人と踊れない人がいるって話が出たんです。これはもう運動音痴というより、使ってる脳が違うよねって。

ゆ:特に、家で一人で書くのを仕事にしている人たちは踊り慣れていないですしね。

金:でも、こういう仕事をしていて言葉や理論で頭がいっぱいになっているからこそ、音楽で頭をまっさらな状態にする必要があるなって思います。そうでないと、頭が固くなって新たな発想とか生まれないんじゃないかな。

ゆ:バランスをとるために?

金:うん、両輪でやっていかないと、ですね。

ゆ:私、クラブのイベントに出たりするんですけど、最後までいると感動しちゃうんです。今夜ここで踊るしかない人たちが今ここにいるんだなって。もちろん、我に返るべき空間じゃないことはわかってるんですけど。

金:私も。突然エモさにからめ捕られて言葉が止まらなくなって、その場で必死に書き留めたりする。

ゆ:“今”しか絶対出てこない言葉ってありますよね。現実の情景は別に関係ないのに。

金:行き詰まってる小説の次の展開がパッと浮かんだり、全然違う話と話が頭の中でつながったり。

ゆ:私もクラブの壁にもたれて思い浮かんだ歌詞のメモが何十分間も止まらなくなったことがあります。ちなみに金原さんは、執筆中も音楽を聴きますか?

金:聴くけど、最近はわりとイヤホンを挿したまま何も聴いていないことが多いです。音楽によっては世界観に強く影響しちゃうから。

ゆ:普段はどんな音楽を聴いていますか? 好きなジャンルとか。

金:日本のロックバンドが好きです。最近だったらSPARK!!SOUND!!SHOW!!やw.o.d.、クリープハイプ、My Hair is Badも好きです。

ゆ:歌詞に重きを置きますか?

金:歌詞における物語性がすごく好きなバンドと、ノリや音自体が激しくて耳心地がいいバンド、両方好きです。

ゆ:え、豊かな音楽体験! 私、歌詞が好きなアーティストばかり追いかけちゃう。

金:たとえばどんな人?

ゆ:女性ソロ歌手、DIVAが全員好きです。その道を選んでくれたってだけで、もう大好き。

金:その道自体が最高だもんね!

かねはら・ひとみ 1983年、東京都生まれ。作家。2003年『蛇にピアス』(集英社)ですばる文学賞を、翌年に同作で芥川賞を受賞。若い読者を中心に絶大な支持を受ける。近著に『腹を空かせた勇者ども』(河出書房新社)、『ハジケテマザレ』(講談社)。

ゆっきゅん 1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun

※『anan』2024年5月8日‐15日合併号より。写真・幸喜ひかり 文・綿貫大介

(by anan編集部)

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