妻の不倫とモラハラで離婚…それでも夫が「慰謝料請求」しなかったワケ

夫や妻が不倫をしていることが分かったら、深く傷つき憎しみがわき、人間不信に陥るでしょう。離婚を考える人も少なくないと思います。

離婚となった場合は、パートナーと不倫相手に対し、慰謝料請求を考えて当然です。

しかし、相手の不倫が原因で離婚するとなった場合も、慰謝料請求しないことを選択する、選択せざるを得ないといったこともあるようです。

妻の不倫とモラハラにより離婚することになった男性・S氏(45歳)の実録をご紹介します。

妻の不倫が発覚したきっかけ

S氏と妻は結婚して15年。2人の子どもにも恵まれました。

ある日、妻は飲み会に出かけ、ひどく酔って帰宅しました。

スマホをテーブルの上に放って、泥酔している妻。そのスマホの画面が点滅し、何気なく見たらそこには衝撃的なメッセージが…。

それは、妻が他の男性と『男女の関係』にあることがすぐに分かるメッセージでした。

それまで妻の浮気や不倫を一切疑ったことのなかったS氏。激しく動揺したものの、すぐ追及することはせず、「とりあえず証拠を集めなければ」と妻のスマホの中身を詳しく調べることにしました。

妻のスマホを開くと、不倫相手との生々しいメッセージのやり取りが出るわ出るわ…。

どうやら妻と不倫相手は、2年以上前から関係があったらしいことが分かりました。

「妻は2週間ぐらい前に、『生まれ変わってもまたあなたと結婚したい』と言ってくれてました。すごく嬉しいなと思って感謝もしていたのに…」というS氏。

円満だったはずの結婚生活に、円満だと信じていた夫婦生活に、偶然スマホの画面を見たことから、大きな亀裂が入ったのです。

不倫発覚後にモラハラが始まり…

それからS氏は、平静を装いながら証拠集めに奔走しました。

妻と不倫相手のやり取りを自分のスマホに転送、保存。妻が出掛けている隙に妻の部屋に入り、不倫の証拠となる品がないかを探し始めました。

ある日、「お父さん、スマホ貸して」と長女に言われ、S氏はうっかり手渡してしまいました。長女はよくS氏のスマホで動画を見たり写真を撮ったりしていたのです。

妻の不倫の証拠写真は別フォルダに保存するなどしておけば良かったのですが、していなかったため、長女にその写真が見られてしまいます。

そこから、S氏が妻の不倫を知っていることが妻にバレることになりました。

妻は不倫を認めて謝罪するどころか、逆ギレし始めました。

「あなたの稼ぎが悪いからよ!」「あなたに対して不満だらけだった」「何年セックレスだと思ってるの?」毎日いろんなことを理由にして責められ、罵られました。

離婚を決めた「長女の言葉」

妻に対していろんな思いが交錯して、ろくに眠れない日が続きました。

S氏は子どもたちのために再構築をすることも考えたそうですが、最終的には離婚を選択することになりました。

離婚を決意するきっかけとなったのは、長女の言葉でした。

「もう離婚したら?お父さんもお母さんも、見ててすごく苦しい」

長女のその言葉で、S氏は、自分たち夫婦のことで子どもたちが苦しんでいること、そして、これ以上家族として暮らすことは悪影響でしかないことに気付いたのでした。

慰謝料を請求をしなかったのは子どもたちのため

妻の不倫が発覚してから、弁護士事務所に相談に行き、妻の不倫の証拠写真等を見せて状況を話したところ、「慰謝料請求は可能」と言われました。

が、S氏が妻や不倫相手に慰謝料請求をすることはありませんでした。

なぜ慰謝料請求をしなかったのでしょうか?

「話し合いの結果、子どもたち二人は、妻と暮らすことになりました。妻に慰謝料請求するにも、妻は金遣いが荒く、財産も貯金もほぼありません。無いところからはどうやっても取れません。

子どもたちのこれからの生活のことも考えたら、慰謝料請求はとてもできませんでした。

不倫相手に請求することも考えましたが、これも妻に『お願いだからそれはやめて』と頼み込まれて断念しました」

現在S氏は一人暮らし。週に一回は子どもたちと遊びに行ったり、買い物に連れて行ったりしているそうです。

子どもたちの養育費は、毎月欠かさず妻に払っているとのことです。

なお、不倫の証拠写真等は、念のためまだ削除はせず保存しているそうです。不倫の慰謝料の時効は「配偶者の不貞行為の事実及び不倫相手を知った時から3年、又は、不倫関係が始まった時から20年」だからです。

離婚後の心情

妻との離婚が成立してすぐ、S氏は40歳以上を対象としたマッチングアプリに登録をし始めました。この先の人生を一生独りで生きていくのは不安だし寂しすぎる、と思ったからです。

というのも、S氏の両親はすでに他界。きょうだいはいますが疎遠。そういう身の上では、離婚後の独りの生活は不安と孤独感が強烈に増し、焦りが強くなるのも当然でしょう。

S氏は「良い人がいれば、将来的に再婚したい」と考えていました。

縁があってお付き合いすることができた女性は何人かいましたが、いずれも3〜4ヶ月ほどで終わりました。

一人目の女性は、結婚したい時期が噛み合いませんでした。(女性側はできるだけ早めにと考えていましたが、S氏は子どもたちが自立し始める年齢になるまでは籍を入れることは考えていませんでした。)

二人目の女性は、相手の女性が求めるコミュニケーションについていくことができず、疲れてしまいました。

「今、離婚して一年以上経って、ようやく不安や孤独感が薄れてきて、独りの生活をそれなりに満喫できるようになってきました」というS氏。

離婚がきっかけとなり、それまで疎遠だったきょうだいや従兄弟、友人との交流も増えてきたそうです。

今回お話を聞かせてくれたS氏の娘さんは、「私は将来、結婚は絶対にしない。お父さんとお母さんを見ているから」と言っているそうです。

親として、せめて子どもたちのこれからの人生にトラウマや禍根を残すことのないようにだけは配慮したいものですね。

(ハピママ*/ 黄本 恵子)

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