「ザルな意味ですごい」会社ケータイ「4400台」売り払って6億円着服…なぜバンダイナムコは7年間も見過ごしたのか?

写真:ZUMA Press/アフロ

5月14日、バンダイナムコエンターテインメント(東京都港区)の元社員、豊住陽一容疑者(59)が、業務上横領の容疑で警視庁に逮捕された。

社会部記者が言う。

「2020年、豊住容疑者は会社が管理するスマホなどのモバイル端末約500台を無断で買取店に売りさばき、約5400万円を横領した疑いです」

実はこの事件について、同社の親会社であるバンダイナムコホールディングスが、2023年1月18日に「当社子会社元従業員による不正行為及び同人に対する訴訟提起のお知らせ」という文書をリリースしていた。

その文書では、《23年1月18日付で、約6億円の損害賠償などを求める民事訴訟を東京地方裁判所に提起いたしました》とし、不正行為の概要を次のように記していた。

《2021年11月に当該会社内にて管理システムに登録されているスマートフォンなどのモバイル端末の数と実際に使用されているモバイル端末の数に差異があることが発覚し、当該会社内にて調査を行いました。

その後、2022年4月に、当該元従業員の関与が疑われましたので、さらに調査を行いました。

その結果、当該元従業員は、2015年4月頃から2022年4月頃までの間、自身が管理していたモバイル端末のうち4400台以上を当該会社に無断で外部業者に売却し、これらの行為等により約6億円を不正に着服したことなどが判明しました》

そして、豊住容疑者を2022年12月20日付で懲戒解雇。さらに文書によれば、ホールディングス社の取締役3名、エンターテインメント社の取締役4名などの報酬を減額している。

容疑者が逮捕された14日には、「当社子会社 元従業員の逮捕について」という文書をリリース。そのなかで、2023年11月17日、損害賠償請求を認める判決が確定したことを報告。2023年12月には刑事告訴もしている。

「豊住容疑者は、横領した金をガールバーや風俗店などの支払いに使ったようです。公訴時効(7年)の成立分を除くと、刑事責任を問えるのは4億円くらいになるようです」(前出・社会部記者)

ホールディングス社は《コンプライアンスのさらなる徹底と内部統制体制の強化を行い、グループ全体で再発防止に取り組んでまいります》としているが、Yahoo!ニュースのコメント欄には

《どういう仕組みか全くわからんけど、何年もかけて会社のスマホ4000台売りさばけるのがすごい。ザルな意味ですごい。これまでバレなかったんだから》

《企業の備品管理として台帳の備えなどどうなってるのかな?と、そっちのほうが気になりました。使わずに契約したまま保管しているスマホがそんなにもあることにも。定期的な監査もないのでしょうか。いろんな意味で驚きの事件です》

《ゲーム会社は、スマホを大量に使うだよね。スマホゲームのデバック(※編集部注:バグを発見して修正すること)で。新機種も動作確認の為にとりあえず買う。だから、大量にかっても怪しまれない。他の社員は、使わなくなったら、どこぞの倉庫にでも保管してあるんだろうと思っている。容疑者はそれを転売したのかな。それとも毎回水増購入して、その分を転売したのかのどちらか》

などのコメントが寄せられている。

それにしても、いったいなぜ会社は7年間も気づかなかったのか。バンダイナムコホールディングスの広報担当者は本誌の取材にこう話す。

「スマートフォンなどのモバイル端末は、デバッグやイベントなどで使用するもので、元社員が自身で管理していました。元社員が台数に関して虚偽の申請をしており、本来であれば、部門としてチェックするはずの機能が働かなかったことも重なりました。

我々のチェック体制が甘かったということになります。チェック体制はありましたが、機能していなかったということになります。

元社員は担当者で、彼の上に管理者がいました。本来であれば、管理者がチェックする仕組みですが、そこも機能していませんでした。

定期的なチェックはありましたが、過去には気づかず、2021年11月に気づいたということです。彼の素行がおかしいとか、そうしたことがきっかけではありません」

容疑者が7年間で管理していた端末の数は「広報としては把握しておりません」とのことだった。チェック体制について、再構築が求められることは言うまでもない。

© 株式会社光文社