『耳の穴』ウエラン井口・とろサ久保田、猛毒芸人2人の「芸人×YouTuber」論争

この春に始まったウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶのトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日系)。ともに猛烈な毒舌で知られる2人だけに、四方構わず噛みつきまくる暴論盛りだくさんの番組になるのではと思われていたが、実際には2人の芸人愛と真摯な芸論を聞くことができる貴重な番組となっている。

特に、元ゾフィー・上田航平や元プラス・マイナスの兼光タカシが登場し、コンビ解散について語られた回には胸を熱くした視聴者も少なくなかったようだ。

14日の放送分では、ネットニュースなどでたびたび話題になる「お笑い芸人とYouTuberの比較」が話題に。もはや誰が何を言っても炎上を呼ぶ着火剤のようなテーマだが、今回も2人はそれぞれの立場から真摯に向き合って見せた。

VTRで登場したのは、太田プロ所属の3年目のピン芸人・のんのん。「これからテレビを目指していく理由がよくわからない」というのんのんは、「若い世代では各々が好きなコンテンツを見るようになって(中略)テレビのお笑いだけが世間についていけずに置いてけぼりにされている」と現状を分析。

また、「テレビで先輩、後輩、同期とか縦横のつながりでお笑いをやるよりYouTubeで人との関係性がない単純なネタ動画を発信している方が今はいいのではないか」と本音を明かした。

うるせーんだよ、好きにしろよ、と一視聴者でも言いたくなってしまう話だが、井口と久保田は切り捨てるようなことはしなかった。

「バラエティが100個あったら100個おもしろいわけじゃない」と、理解を示す久保田。井口も「自分がどうなりたいかっていうのが、一番大事ですからね」と、いつになく真剣な表情だ。

井口はテレビが限界を迎えても最後までテレビに出たいといい、「縦横のつながり」こそ楽しい、最高に楽しいと井口なりのモチベーションを明かした。

また、「芸人はインフルエンサーを腐す傾向がある」というのんのんの言葉を受けて、井口は「ネタを持っている強さ」を語る。同じイベントで人気YouTuberと芸人が共演した際のエピソードとして、最初はYouTuberのほうが盛り上がるが、30分たてば「圧倒的に芸人が勝つ」という現実を披露すると、久保田は元雨上がり決死隊で現在はYouTuberとして活動している宮迫博之のエピソードとして「(収録現場に)行ったときに人がいないから気持ちが上がらへんって」という現場の空気感や環境の違いから、テレビの魅力を語った。

冷静かつ客観的、芸人とYouTuber双方への敬意があり、極めてフェアな立ち位置をキープ。

繰り返しになるが、この2人のキャスティングでこういう番組になるとは予想できなかったし、2人のこうした面が披露される番組がテレビの地上波で放送されていることこそ、今のテレビの懐の深さだと感じる回だった。

(文=新越谷ノリヲ)

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