出廷した水原一平被告とエレベーターに乗り合わせたMLB担当記者 20秒の長い沈黙の末に 襟足長い髪はつやつや

 日米報道陣の質問に無言を貫く水原一平被告(撮影・小林信行)

 ドジャースの大谷翔平選手(29)の銀行口座から金を盗んで不正送金したとして、銀行詐欺などの罪に問われた元通訳の水原一平被告(39)が14日、罪状認否のためロサンゼルス連邦地裁に出廷した。既に罪を認める司法取引に応じているが、手続き上の理由から形式的に無罪を主張。司法省によると、次回審理で罪を認める見通しだ。約50人の報道陣が集まり日米で大きな注目を集めた中、水原被告とエレベーターに乗り合わせたデイリースポーツ・小林信行記者が、現地の様子や混乱などを追った。

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 黒いスーツにノーネクタイの白シャツ。肩と肩が触れそうな距離に水原被告が立っていた。ロサンゼルス連邦地裁640号法廷で罪状認否を終えた被告とフリードマン弁護士を、約50人の日米報道陣が追う。6階から降りるエレベーター。一瞬、ためらったが、2人に続いて十数人の記者たちと一緒になだれ込んだ。

 同被告と最後に言葉を交わしたのは3月20日、韓国開幕戦の試合前。他愛もないあいさつだった。試合後のクラブハウスでは大谷の通訳をする様子も間近で見ていた。「私はギャンブル依存症です」。その直前に行われたミーティングで告白していたことを米報道で知った。

 エレベーターの中では右隣に立つ水原被告の顔をずっと観察した。2月にキャンプ地で会った時ほど痩せた印象は受けなかった。襟足の長い髪は整髪料なのか、つやつやしていた。生気のない、うつろな目はずっと遠くを見ていた。何も視界に入っていないようだった。

 真一文字に結んだ口に強い意志を感じた。話し掛ける絶好の機会。しかし、言葉が見つからない。なぜこんなことを…。ただただ悲しかった。法廷からエレベーターまでの約20メートルの間に、質問攻めにしていた記者たちも、なぜか黙ったまま。長い長い20秒だった。

 開廷30分前には、法廷の前に並んでいた報道陣が、地裁担当者に690号法廷への移動を命じられた。傍聴を認められず、廷内の音声のみを聴くことを知らされた一人の米記者が「報道の自由の侵害だ」と猛抗議。急きょ、報道陣46人の署名を集めて異議申し立てを行った。治安判事とみられる人物は「安全上のリスクがあり、対応するための人員が足りない」と説明。結局、法廷に立つ被告を見ることはできなかった。

 4月12日の初出廷の際、法廷以外では報道陣の目を避けて、裏口から出入りした同被告。しかしこの日は、道路に横付けにした黒いバンから建物までの約200メートルの距離を歩いた。報道陣に囲まれ、口は開かずとも、背筋を伸ばして、堂々と歩き続けていた。

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