プレミアリーグ来季VAR廃止、投票で賛否を問う

ウルブスが決議案を提出、来月開催の20クラブの代表が集う総会でテーマに。

イングランド・プレミアリーグが6月に開催する年次総会で、来季2024-25シーズンからの「VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)廃止」について、投票で賛否を問うことになった。

『ジ・アスレチック』によると、5月15日、ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズFCがVAR廃止を求める決議案を提出。プレミアリーグの20クラブの代表が集まる総会で決議を取ることになった。

VARが2019-20シーズンから5年間実施されてきたことを踏まえ、多くの問題も見えてきた。そのなかでウルヴスは「慎重に検討し、プレミアリーグ、(審判団体)PGMOL、そして仲間であるプレーヤーに最大限の敬意を払った結果」として、この議論を望んだ。

ウルブスはVAR導入による弊害を列挙。プレミアリーグの魅力であるスピーディさ、ダイナミックさ、感情の発露……そういったものを阻害しているだけだと主張している。

ウルブスは次のような問題点を指摘している(※要旨)。

・ゴールセレブレーション、特別である情熱的な瞬間への影響

・長時間のVARチェックとコミュニケーション不足によるスタジアム内のフラストレーションと混乱

・VARへの抗議、ブーイング、チャントなどによる審判への敵対的な雰囲気

・明確なミスを正すVAR本来の目的を逸脱し、主観的な判定を過剰にチェックし、ゲームの流動性や本質を損なっている

・VARというセーフティネットのため、フィールドにいる審判のアカウンタビリティの低下、ピッチ上の権威失墜

・VARがいてもミスは起き続けている。サポーターはリプレイを何度も見ても人為的なミスを受け入れられず、審判の基準に対する信頼が損なわれている

・アディショナルタイムの増加により、プレミアリーグのスピーディさが損なわれ、試合が過度に長くなった

・VARの判定に関する議論が試合そのものにも影を落とし、リーグの評判を落としている

・VARが無意味な疑惑を煽ることで、信頼と評判が損なわれている

プレミアリーグの投票結果は注目される。ゴールが決まった瞬間のあの歓喜の爆発が、ぬか喜びになる……。しかも選手たちのその後のパフォーマンスに明らかに影響を及ぼす点は、確かにVARの大きな弊害に挙げられる。

指摘にあるように、近年は映像の切り抜き方など、VARオペレーションルーム内の”主観”により印象操作が行わている感も否めない。

つまり、ざっくり言えば、誰もが分かりやすいはずのルールが売りのサッカーで、そこまで厳密にチェックする必要があるのか――と指摘していると言える。数センチ単位でチェックしているオフサイドラインも、カメラの若干の角度で見え方は変わり、果たして本当に完璧な平行線が引かれているのか? という疑問は拭えない。

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とはいえ、以前に戻す、というのもまた極端ではある。審判の作業量も増加したが、ジャッジの正当性が増したのもまた明らかだ。いずれにせよ、ここで一石が投じられ、VAR論争が改めて、日本(Jリーグ)を含めた世界中で繰り広げられることになりそうだ。

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