首里城再建に井波彫刻の技 南砺の砂田さんら 正殿の装飾、1年がかり

唐破風の龍の彫刻を彫る砂田さん(左から3人目)ら井波彫刻師=南砺市川西

  ●龍や宝珠、作業場を公開

 2019年秋に火災で焼失した沖縄県那覇市の世界遺産「首里城」の再建に250年以上の歴史を誇る井波彫刻の技術が生かされる。城の最も重要な建造物「正殿」の装飾「唐破風(からはふ)」の彫刻を南砺市川西の井波彫刻師砂田清定さん(74)が担当することになった。大型連休明けから弟子の彫刻師ら計7人で龍の彫刻制作を始め、作業場を公開している。世界遺産の修復を通じ、井波の彫刻技術の高さを広く知ってもらう。

 砂田さんは寺社仏閣の彫刻の復元を得意とし、2016年の熊本地震で全壊した阿蘇神社の彫刻や、18年の首里城「美福門」の復元で門に掲げる「山号額」を担当した。昨年、首里城再建を担当する大手建設会社の依頼があった。現地を計3回訪れ、図面や古い写真を基に下絵を描き、2月に粘土で原型をつくった。沖縄県側の大学教授ら有識者の承認を得て制作に乗り出した。

 丸い曲線が特徴の「唐破風」の彫刻は縦1.8メートル、横8.6メートルで、「あうん」の2匹の龍が向き合っている。中心には「火焔宝珠(かえんほうじゅ)」があり、周囲は「蟇股(かえるまた)」や雲で構成されている。砂田さんは技術継承の目的もあり弟子らに協力を依頼し、7人でヒノキ材を使って制作を進めている。

 首里城の龍は髪の毛やひげに特徴があり、丸くて大きい目は中国の影響を受けているという。指の数も国内の寺社仏閣の龍は通常3本に対し、首里城では4本ある。来年1月の納入後、現地で赤や黒色の漆が塗られる。正殿は2026年秋の完成を予定する。

 南砺市川西の作業場に「金龍復元 首里城」の看板を掲げ、制作風景を見学できるようにした。香りの強いヒノキの削りかすを袋に詰めて、道の駅福光で販売し、能登半島地震の義援金に役立てることも検討している。

 砂田さんは「沖縄の関係者は井波彫刻に関心があると感じた。再建を契機に沖縄と南砺市の交流につながってほしい」と話した。

 

 ★首里城 琉球王国の国王の居城で、政治や外交、文化の拠点だった。太平洋戦争で焼失したが、1992年の日本復帰20周年を記念し、主要施設が復元された。2000年に正殿を支える「基壇」の遺構を含む「琉球王国のグスクおよび関連遺産群」は、世界文化遺産に登録された。19年10月、正殿から出火し、計6棟を全焼した。世界遺産部分は焼失を免れた。正殿は26年中に復元される予定。

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