県鳥イヌワシを探せ! 24年ぶり生息調査

イヌワシの調査をする馬場さん=白山市尾添

  ●国天然記念物、保護へ一役 白山麓、月2回

 「イヌワシを探せ!」。北國新聞社の手取川環境総合調査団は15日までに、白山麓一帯で、絶滅危惧種となっている国の天然記念物イヌワシの生息数調査に乗りだした。石川県内での本格的な調査は2000年以降行われておらず、24年ぶりの実施。目撃情報の多い手取川流域を対象に、9月まで月2回のペースで調査する予定で、収集したデータを県鳥の保護に役立てる。

 調査は、北陸鳥類調査研究所(小松市)の馬場真悟さん(野鳥グループ)が中心となって行う。白山市尾添や中宮温泉など約10カ所のポイントを定期的に巡回し、イヌワシを撮影、発見場所を記録するなどして情報を集める。個体の識別も進め、生息数を明らかにする。

 県内ではこれまで、1985年に県自然保護センターが、98~2000年に県自然環境課が、それぞれイヌワシの生息数を調査した。85年にはつがいが22組見つかり、うち12組が白山麓だった。98~00年は15組が確認された。

 01年以降は、県野生動物保護対策調査会鳥類分科会が日本野鳥の会会員らから情報収集したり、白山麓での観察を行っているが、生息数の調査は行っていない。

 イヌワシはつがいが縄張り内で生活する習性があり、縄張りの範囲は20~250平方キロに及ぶことが過去の研究で判明している。今回の調査では、こうした特徴を念頭に、同じ個体をカウントしないようしっかり識別することで、詳細な分布と行動エリアの把握につなげる。

  ●山地生態系の「頂点」 全国的に急減

 馬場さんによると、イヌワシは日本の山地生態系の「頂点」に位置するが、全国的に生息数が急減しており、県内でも00年より生息数が減っている可能性がある。

 馬場さんは「今後の保全対策を検討する上でも、まずは個体数や分布を早急かつ継続的に把握することが求められる」と強調した。

 馬場さんが今回の調査に先駆け、昨年9月~今年3月に自主的に実施した調査では、4組ほどのつがいを確認した。

 調査ではイヌワシのほか、イヌワシの巣の近くに巣を作らない傾向があるクマタカについても調べる。クマタカは近年、生息範囲が拡大しており、イヌワシの生息数減との相関関係を調べる。

 

 ★イヌワシ 国内では北海道から九州の山岳地帯に生息し、翼を広げると最大で2メートルになる。環境省のレッドリストでは、近い将来に野生での絶滅の危険性が高いとされている。森林伐採や単一種の植林、ダム建設などで、餌のノウサギやヤマドリが減少したのが要因とされる。

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