【大敗した川崎が、アウェイ鳥栖の地で確認した「鉄のハート」(1)】敗れた選手にサポーターが起こした行動とは。川崎だからこその“共闘の姿勢”

大敗してショックを隠せない川崎フロンターレの選手 撮影:中地拓也

他のチームでは考えられないかもしれない光景だった。ただ、この川崎フロンターレでは当然のことかもしれない。

「どんな時も俺たちそうさ心くじけない」

電光掲示板に浮かぶ「5-2」というスコアをバックに、サポーターが喉を枯らす。リズムに乗った歌詞が、その場にいる人のネガティブな気持ちを吹き飛ばそうとする。“どんな時も”と歌うように、「2」が川崎を指すものだとしても応援する気持ちは変わらない。

「アオとクロの誇り胸にさあ行こうぜKAWASAKI」

いや、応援と書く方が語弊があるだろう。なぜなら、選手とサポーターが共に戦うのがこのチームだからだ。サガン鳥栖に大敗したJ1リーグの第14節。アウェイの地で、サポーターはさらにこう歌い上げる。

「いつも俺達と共にぶちかませよJust Going Now」

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5戦無敗。苦しむ川崎は第9節・東京ヴェルディ戦以降の5試合を2勝3分として、積み上げたものを結果に結びつけつつあった。それ以前に4試合無得点と雌伏の時間も過ごしたものの、直近5試合で複数得点を取った試合が3つあった。

その得点力だけでいえば、駅前不動産スタジアムでも同様のものを見せた。前半13分に高井幸大が、そのアディショナルタイムに家長昭博がゴールを決めて2得点を記録しているからだ。問題は、失点の数にあった。今季ワーストタイとなる5失点を献上してしまったのだ。

■鬼木監督が感じたこと

90分で5度の失点は精神的なダメージが大きい。それでも、サポーターは声援を止めなかった。ピッチの上で走る選手を突き放すことは、このチームではありえない。だからこそ、試合後にはチャントを歌い上げた。

「下を向くな!」
「一緒に闘おう!」
合いの手のように、前向きな言葉が投げかけられる。必死に叫ぶ姿は、共闘以外の何物でもない。

選手も指揮官も、この“共闘”を幸福なことだと実感しており、だからこそ悔しさを募らせる。試合後の鬼木達監督は、その思いをこう話す。

「感謝しかない。今日のような結果であれば怒りもあるでしょうけど、それを逆に声にして歌にして、そこには感動しかないですし、だからこそ、自分は誰よりも悔しい。そこに応えられなかった。だから選手には“次”が大事だという話をしています。当然、一緒に喜び合いたい」

文章には表せない悔しさともどかしさを見せながら、鬼木監督は心中を説明した。

(取材・文/中地拓也)

(後編へ続く)

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