大谷翔平、三冠王へばく進のなか米国で注目の“微笑”表紙雑誌 賭博・水原被告「26億円窃盗」で皮肉な価値上昇

大谷翔平選手 ※画像はドジャースの公式X(ツイッター)『@Dodgers』より

MLB、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手(29)の勢いが止まらない。

現地時間5月12日(日本時間13日)は腰の張りでサンディエゴ・パドレス戦を欠場し、ダルビッシュ有(37)選手との今季3度目の対決は実現しなかったものの、翌日のサンフランシスコ・ジャイアンツ戦ではスタメンに復帰。マルチ安打を記録し、チームの勝利に貢献。

翌14日は1本塁打を含む3安打、2打点を叩き出し、ドジャースは連勝。大谷選手は現在、ナショナルリーグで打率は.361で1位、12本放っている本塁打も1位タイ、打点も4位に位置しており三冠王が十分に狙える位置にあり、絶好調だ。

一方で、大谷選手の通訳だった水原一平被告(39)周辺の動きも騒がしい。

大谷選手の預金口座から不正に送金したとして銀行詐欺容疑で訴追された水原氏。大谷選手の被害総額は約1700万ドル(約26億5000万円)に上ることも明らかになった。

そして14日、水原被告はロサンゼルスの連邦地裁に姿を見せた。この日の目的は罪状認否で無罪を主張するためだったが、それは手続きを進めるなかでの形式的なものと見られ、水原被告はすでに大谷選手のカネを奪った銀行詐欺罪などの罪を認めているとされる。減刑を求める司法取引に合意済みと言われ、後日、有罪答弁を行なうとされる。

水原被告は連邦地裁に多数訪れた取材陣に一言も発せず、険しい顔をして去って行ったというが、そんな彼の一連の賭博スキャンダルがアメリカでテレビドラマ化されることも5月10日に発表されるなど、大谷選手の活躍と水谷被告の動向は日米で大いに注目を集めている。

そして、大谷選手を巡っては、アメリカの老舗雑誌『The New Yorker』の表紙を飾った風刺イラストが賛否を呼んだ。そのイラストはドジャースのユニフォーム姿でバットをスイングする大谷選手の姿が描かれているのだが、胴長短足でお尻のポケットからは札束がはみ出しているという皮肉たっぷりなものだった。

同誌の公式サイトにはイラストを手掛けたマーク・ウルリクセン氏の「彼はどのリーグでも最高の投手であり、打者であり、最速の走者です」というコメントを掲載。一方で「大谷が金銭スキャンダルに巻き込まれたことも、良くも悪くも彼の注目度を高めている」とも言及している。

このイラストに、

《確かに不快だが、大谷はそんな批判も想定内でだろう》
《センスがいい風刺とは思わんねこんなの》
《胴長短足を誇張するのは東洋人に対する蔑視》

とX(旧ツイッター)にはさまざまな声が寄せられた。

「賛否の声が上がる『The New Yorker』の表紙もそうですが、大谷選手を巡ってはもう1つ雑誌の表紙の件が、アメリカの野球好きの間で話題になっていたといいます。それは、大谷選手が表紙を飾っている1月刊行の『ROTOWORLD FANTASY BASEBALL』ですね」(夕刊紙デスク)

■大谷翔平が表紙を飾った「ファンタジーベースボール」の雑誌とは

『ROTOWORLD FANTASY BASEBALL』は、アメリカのテレビ局・NBCのスポーツ情報サイト『ROTOWORLD』から刊行されている野球年鑑。現在は売り切れているものの、日本でもオンライン書店で購入することができた。

同誌の「SPIRNG 2024年」号では、大谷選手がドジャースのキャップを被り、青いネクタイにシャツの上からドジャースのユニフォームを着用しており、穏やかな微笑みをたたえている。

「特別に撮り下ろしたものではなく、ドジャース入団会見のときの写真を許可を得て表紙に使ったのでしょう。ただ、大谷選手がこの雑誌の表紙を飾ったことが、今になってアメリカの野球ファンをザワつかせていたんです。

『FANTASY BASEBALL(以下、ファンタジーベースボール)』はアメリカでポピュラーな野球ゲームですが、賭博ではないかという議論もたびたびありますからね」(前出の夕刊紙デスク)

「ファンタジーベースボール」は、参加者が実在の野球選手を一定のルールのもとに編成して架空の球団を組み、その選手たちの実際のシーズンの成績をポイント化して総合点などを競うというシミュレーションゲームだ。

草創期はスポーツバーの一部野球ファンの間での趣味として広がっていったが、1990年代後半にネットが普及し、大手のメディア企業などが運営するように。上位入賞者には賞金などが贈られるようになり、MLBだけでなく、NBA(バスケットボール)、NFL(アメリカン・フットボール)などを含め、さまざまな調査結果があるが2024年時点での北米の市場規模は約132億ドル(約2兆円)だとされる。

「2029年までに4兆円近くまで北米の市場は拡大するとも言われていますね。ただ、同ゲームにはアメリカの人たちの間でも多くの意見があります」(前同)

■水原一平被告の巨額賭博騒動勃発で雑誌は価値が上昇

2015年10月、当時のMLBコミッショナーは「ファンタジーベースボール」について「賭博ではない。ゲームとしての技術が必要なもので、法に則っている」「ファンと(野球と)の関わりにおいて重要な要素」と商業的効果を主張していた。

「そんななか、1日など短い期間でプレイできるデイリー・ファンタジー・スポーツ(DFS)が始まり、さらに普及していきます。主にはNFLとNBAだといいますが、ベンチャー企業が主催し、プレイヤーは参加料を支払ってゲームに参加し、勝てば最高で100万ドル(約1億5600万円)を超えるような賞金を得られるように。それにより市場は大盛況となり、そこで再び、大手メディア企業などもDFSに参入していったんです。

ただ、同時に検察当局が動いた運営サイドの不正もあった。また、一部プレイヤーの依存症の問題も浮上し、DFSを違法とする州も出てきました」(前出の夕刊紙デスク)

近年では多くの州がDFSを許可している状況にあるというが、

「当然、愛好者やDFSで収入を得ている人、その関係者は同ゲームに深い理解がありますが、いまだ非常に厳しい目で見ている人も多くいるといいます。同ゲームは“技術が必要なもの”で運任せのギャンブルではない、といいますが依存性があることは否定はできないでしょうし、まだまだ議論はあるところなのではないでしょうか。

そんな『ファンタジーベースボール』のガイド本の今季の表紙を大谷選手が飾ったというわけです。雑誌の発売当時は、エンジェルスからドジャースに移籍した“今季の大注目選手”が表紙になったというだけで大きな話題になりませんでしたが、3月20日のドジャースの開幕戦終了後に水原被告の賭博スキャンダルが勃発。

結果、大谷選手が表紙の雑誌『ROTOWORLD FANTASY BASEBALL』にあらためて注目が集まったんです」(前同)

先の4月にアメリカ出張で現地を訪れた広告代理店社員はこう語る。

「コロラド州ボルダーのバーンズ・アンド・ノーブルという大型書店で、たまたま棚の端の方に売れ残っている雑誌『ROTOWORLD FANTASY BASEBALL』を見つけて、購入したんです。現地の友人に雑誌を見せると“大谷、こんな雑誌の表紙になっちゃってたんだね……”という反応でした。やはり現地でも、『ファンタジーベースボール』が“ギャンブル性があるもの”として見られているのだ、と感じましたね。

水原被告の賭博騒動が勃発した後であれば“大谷の写真を表紙に使いたい”とオファーが来ても、大谷選手とドジャースは断固として断ったでしょう。

大谷選手はもちろん、ドジャースにも非はありませんが、水原被告の事件が起こった今、大谷選手の微笑む写真が表紙を飾る『ROTOWORLD FANTASY BASEBALL』は、なんとも皮肉なものになってしまっている。やはり手に入れたい人もいるようで、もともとは6.2ドル(約970円)だったのが、今、アメリカのネット書店では、中古雑誌が20ドル(約3100円)程度で取り引きされているといいますよ」

水原被告に約1700万ドル(約26億5000万円)も盗られ、さらには、なんとも皮肉な雑誌も話題になっているという大谷選手。水原被告は今月中にもあらためて出廷し、罪を認めると見られており、まだまださまざまな報道に振り回されることだろう。

そんな状況でも圧巻の数字を叩き出している大谷選手は、やはり怪物。14日の試合後の米メディアの質問に“最初の頃はいろいろあって睡眠が足りていなかった日が続いていた”という話を語った大谷選手。今後も、十分な睡眠時間を確保して三冠王に向けてばく進してもらいたい。

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