【ビールを通じて感じる韓国㉑】ソウルとその近郊でクラフトビールを飲む(7) 住宅街にあるソウルブルワリー@合井

4月に参加した韓国のビールEXPO「KOREA INTERNATIONAL BEER EXPO(KIBEX)」では、今まで名前は知っていても飲む機会がなかったり、まったく知らなかった韓国のブルワリーのビールを飲み、お話を聞くことができました。

・KIBEXについては、
韓国のビールEXPO「KOREA INTERNATIONAL BEER EXPO(KIBEX)」に行ってきました<前編>(2024.4.30)
韓国のビールEXPO「KOREA INTERNATIONAL BEER EXPO(KIBEX)」に行ってきました<後編>(2024.5.3)
で取り上げています。

KIBEXでお話しをさせていただいたブルワリーの中から、ソウル市内にあり、かつとても丁寧かつフレンドリーな応対をしていただいたブルワリーを実際に訪問してみました。地下鉄2号線・6号線の合井(합정・Hapjeong・ハプチョン)駅が最寄り駅のソウルブルワリー(서울브루어리・Seoul Brewery)です。

合井とは

ソウルの合井はまだあまり知られていない地域で、ソウルに行ったことがあっても名前を聞いてすぐにどこだかわかる方は少ないと思います。
場所は、韓国を代表する美術家やデザイナーを多く輩出してきた弘益(홍익・Hongik・ホンイク)大学があり、アートや音楽などの創作活動を行なう若者たちや観光客で深夜までにぎわう弘大(홍대・Hongdae・ホンデ)エリアのすぐ西隣になります。日本であえて例えるならば、上野に東京藝術大学があるのでその隣の御徒町のような感じでしょうか。

ソウルブルワリー<合井>

ソウルブルワリーとは…

2017年に醸造所を設立。醸造したビールの販売を始めたのは2018年3月と比較的新しいブルワリーですが、現在では韓国屈指のブルワリーのひとつになっています。
通年で造っているビールのほかに、過去のビールスタイルにとらわれずに季節に合わせて様々な副原料を使用して、豊かな味わいのビールを造っています。これまでに造ったビールは100種類を超えるとのことです。
KIBEXの会場でお話ししたときに、日本のWest Coast Brewingとのコラボビールもあると聞きました。また、JAPAN BREWERS CUP2024にもエントリーしており、エントリービール数78の濃色ビール部門でRobust Porterが1位を受賞しています。

行き方

合井駅は方角によって街の雰囲気がかなり違います。ソウルブルワリーのタップルームに一番近い7番出口周辺には高層ビルはなく、低層の建物の飲食店などが並んでいました。

タップルームは以前あった古い住宅をリフォームしたもので、周囲の住宅街に溶け込んでいます。ちなみに、リフォームを手がけたのは日本人のデザイナーだそうです。

店内へ

数段の階段を上がって店内へ。内部は木を基調にしたインテリアでまとめられており、落ち着いた雰囲気があります。
左手にはカウンターとその奥にテラス席。正面には醸造設備が見えます。座席は8人掛けの長テーブルが3つ、テラス席には2人掛けの席が6つほど並んでいます。

ビールは自家醸造の10種類がつながっていました。ビールの説明はすべて韓国語ですが、そのビールの特徴が英単語3つで記載されているので、選ぶのに参考になります。
私はまず”CRISP,CLEAN,HERBAL”と書かれていたアルコール分4.8%のCRAFTWERK PILSを選びました。容量は400mlで7500ウォン(約825円)。すっきりとした苦みが程よいビールでした。ドイツ産の麦芽とホップのみを使用しているそうです。

2杯めのビールは、”JUICY,PASSION FRUIT,PEPPERY”となっていたSALINGER RYE IPAにしました。アルコール分5.3%で、8500ウォン(約935円)。フルーツの爽やかな香りがあり、意外とスムースな口当たりで、IPAをあまり飲まない方にもお勧めしたいビールでした。
ビールのネーミングは、J.D.サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」のストーリーのイメージからきているそうです。

合井で感じたソウルブルワリーの魅力

・もちろんビールが美味しい
事前に見ていた「過去のビールスタイルにとらわれず、季節に合わせて様々な副原料を使用して豊かな味わいのビールを造る」という言葉からは、かなり個性が際立っているビールのイメージがありました。でも実際に飲んでみるとどれもとてもバランスのとれたビールで、苦手なスタイルでも試してみたくなりました。
料理も、珍しいメニューもありとても美味しかったです。

・ソウルにいるとは思えないぐらい穏やかな雰囲気
周囲が住宅街のせいか、店内はのんびりとして穏やかな空気が流れています。入口に近い長テーブルに座って外の住宅街や醸造設備を眺めながら飲むのも、テラス席で庭を眺めながら飲むのもよし。大都会ソウルにいることを忘れてしまいそうでした。

・スタッフが素晴らしい
やはり、一番のお勧め理由はこれです。
KIBEXでの応対も、一方的に説明するのではなく、なぜソウルブルワリーのビールを知っているのかなど質問もしてきて、対話を楽しんでいる感じ。とても心に残りました。
今回、合井のタップルームに入店したときから対応してくれたスタッフは日本語が堪能。最初に「わからないことは何でも聞いてください」と日本語で言われたのは、とてもありがたかったです。前述したように、サービスでサワーの味見もさせてくれました。
私が韓国のタップルームで出会ったスタッフの中では5本の指に入る素敵な応対で、店長?それとも…と考えていたら「私はただのアルバイトです」とのことで、さらにビックリしました。
それ以外の方も、感じのよい方ばかりでした。もちろん全員が日本語対応できるわけではありませんが、英語対応なら可です。

ソウルブルワリー<聖水>

合井にあるのはソウルブルワリーの最初にできたタップルームですが、現在一番大きいタップルームは聖水洞にあります。2023年3月に営業を開始した新しい直営店で、ここでも醸造を行っています。(これも合井で対応してくれたスタッフからの情報です。)

・聖水洞エリアについては、以前こちら(2023.5.16付【ビールを通して感じる韓国⑥】ソウルとその近郊でクラフトビールを飲む(2) アメイジングブルーイング(AMAZIING BREWING)@聖水洞)で紹介しています。

地下鉄2号線の聖水駅から徒歩7~8分。メインの通りからも見える細長いビル全体がソウルブルワリーです。5階建てで屋上と地下もあります。各フロアのコンセプトが違い、例えば1階はカフェ中心、2階はタップルーム、3階はダイニングとなっていて、ライブなどができるスペースもあるそうです。

訪問したのは平日のお昼過ぎ。お店は11時開店という情報があったので開いていた1階で聞いてみると「ビールは3時から」とのこと。他にも用事があったため、残念ながら今回はここで飲むのは諦めることにしました。
次回があれば、ここから徒歩数分でアメイジングブルーイングにも行けるので、ビールのはしごを楽しむことも合わせて考えたいと思います。

都会の喧騒から少し離れてまったりとビールを飲みたいときには合井へ、お洒落な街を歩くのも楽しみながら飲みたいときは聖水へと、使い分けができるタップルームを持つソウルブルワリー。これからも様々なビールが誕生していくであろうことも含めて、今後も注目して行きたいと思います。

*__◎ソウルブルワリー<合井>(서울브루어리 합정)__
所在地:서울 마포구 토정로3안길 10(10 Tojeong-ro 3an-gil, Mapo-gu, Seoul)
営業時間:平日17:00~0:00・土日13:00~0:00*

◎ソウルブルワリー<聖水>(서울브루어리 성수)
所在地:서울 성동구 연무장길 28-12(28-12, Yeonmujang-gil, Seongdong-gu, Seoul)
営業時間:11:00~0:00(カフェのみ営業も含む)

*参考文献:「CRAFT BEER KOREA(KOREAN CRAFT BREWERY GUIDE BOOK 2020)」BEER POST PUBLISHING
*100ウォンを約11円として換算しています

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