2度の“もらい事故”でBMW両車リタイア。母国レースでの悲劇に「飲み込み難い」とWRTのボッセ代表

 WEC世界耐久選手権に参戦しているチームWRTのヴァンサン・ボッセ代表は、先週末に行われたスパ・フランコルシャン6時間レースで、自身のチームのLMGT3マシンが2台ともハイパーカーが絡むアクシデントに巻き込まれ、ダブルリタイアを喫したことについて「飲み込むのは難しい」と語った。

 チームWRTは、レース中に雨に見舞われた4月のイモラで見事な戦略を披露しワン・ツー・フィニッシュを達成。シーズン第2戦での成功で自信をつけ“ホーム”であるベルギーでのレースに臨んだ。

 しかし決勝レースのスタートから1時間30分が経過した頃、アハマド・アル・ハーティとバレンティーノ・ロッシ、マキシム・マルタンがドライブする46号車BMW M4 GT3は、ターン8で多重クラッシュに巻き込まれてしまう。

 このクラッシュは20号車BMW MハイブリッドV8がハーツ・チーム。JOTAの38号車ポルシェ963に追突したことが引き金となり、スピン状態となった38号車に衝突されたアル・ハーティ駆る46号車BMWがバリアに衝突し、フロントに大きなダメージを負うこととなった。

 一方、ダレン・レオン/ショーン・ゲラエル/アウグスト・ファーフス組の31号車M4 GT3はレース再開後に表彰台争いに加わり、4時間目終了時にはクラス3番手まで順位を上げていた。しかし、こちらのクルマにも悲劇が訪れる。

 レースが5時間目に入ってまもなく、ゲラエルがドライブしていた31号車はケメル・ストレートでアール・バンバーが駆る2号車キャデラックVシリーズ.Rから接触を受けクラッシュを喫した。両車のドライバーが無事だったものの高速区間で発生した大クラッシュはその後、約2時間にわたってレースを中断する赤旗のきっかけとなった。

 今シーズンの開幕戦を制し、LMGT3クラスの記念すべき最初のウイナーとなったマンタイ・ピュアレクシング(92号車ポルシェ911 GT3 R)は、このクラスの中で唯一3戦連続で表彰台を獲得している。今回、WRTがスパで見舞われた悲劇は彼らのチャンピオンシップ争いにも影響を与えている。

 レオン/ゲラエル/ファーフスのトリオは、第2戦イモラでの勝利のおかげでランキング2位につけているが、今大会を終えた後ではランキング首位とのポイント差は17ポイントから35ポイントへとほぼ倍増した。46号車は姉妹車から1ポイント少ない36ポイントで、ランキング4位に位置する。

 レース後、チーム代表のボッセは、2台のクルマが自分たちの責任ではないアクシデントでリタイアしたことに不満が残っていると認めた。

「良い結果を得るためにはクリーンなレース運びが必要だ。しかし、我々は残念ながらクリーンなレースをすることができなかった。その理由を分析し、改善しなければならない」と同氏はSportscar365に語った。

「LMGT3では31号車と46号車で積み上げてきたものが、ドライバーの責任ではないところで消えてしまったことが残念でならない」

「飲み込むのは難しい。ここで失ったポイントを取り戻すために、ル・マンで何ができるか見てみよう」

 46号車のドライバーの中で唯一、レース中にステアリングを握ったアル・ハーティは、ボッセと同じ思いを抱いており、アクシデントが起こる前にチームを戦略的に良い状態に置くことに集中していたという。

「レースを完走できなかったのは本当に残念だ」とアル・ハーティ。

「とても強力なポジションからスタートできたし、僕がクルマに乗っているはずの2時間のためにタイヤを温存しなければならないことも分かっていた。そのために、タイヤのデグラデーション(劣化)を抑えるという具体的な戦略などもあったんだ」

「上位の4~5番手をキープしていたし、残りのレース戦略もうまくいっていた」

「不運なことに、2回目のピットストップまで残り9周というタイミングで2台のハイパーカーが接触してしまった。それを避けることができなくて、我々のレースも終わってしまったんだ」

「これがレースだよ。このようなことも起こるものさ。こうした経験で我々は次のラウンドに向けて強くなるんだ」

チームWRTの31号車BMW M4 GT3(ダレン・レオン/ショーン・ゲラエル/アウグスト・ファーフス組) 2024年WEC第3戦スパ

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