「オンライン面接だけで選考終了」or「面接10回以上」…二極化する採用現場の最新事情【人材紹介のプロが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

新たな人材を採用するならば「面接」を避けては通れません。東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏曰く、過熱する採用市場は「二極化」が進んでいるようです。そこで本記事では、最新の「面接」の実情と優秀な人材を採用するコツについて解説します。

オンライン面接で求職者の負担減も…10回以上面接をする企業も

私どもは人材紹介のエージェントとして中途採用の現場を日々見ているわけですが、最近は採用市場が二極化してきているのを感じます。

売り手市場の時期は人が採れないため、一般的には求職者(※優秀な求職者に限る)が優位に立つ局面が増えてきます。ですから、よほどの有名企業でない限りは選考プロセスで求職者に大きな負担を掛けると選んでもらえなくなる可能性が出てきます。そのため、採用市場が過熱しているときほど面接回数を減らす必要があります。

具体的な例でいえば、1次面接をオンラインで行い、来社の負担を減らしたうえで最終面接のみ会社で実施するなどの配慮が必要になってきます。場合によっては、面接すべてをオンラインで済ませることも視野に入れるべきでしょう。

最近は、あらゆるフェーズをできる限りオンラインで完結させようとする企業もめずらしくありません。忙しく活動している求職者の負担をできるだけ軽減する、ホスピタリティに満ちた対応が見受けられるようになりました。

しかし、その一方で10回以上の面接を実施するなど、度が過ぎるほど慎重な選考を行っている企業も時折見受けられるようになりました。面接回数が多いことを問題視するわけではありませんが、昔を振り返ると考えさせられるものがあります。

20年ほど前になるでしょうか、外資系の戦略コンサルティングファームが日本に上陸し、新卒採用で極めて優秀な人材を厳選して採用していた時期がありました。その頃、ごく一部ではありますが、10回など非常に面接回数の多い新卒採用の選考手法が脚光を浴びたことがあります。

それ以後は、職位にもよりますが、中途採用では平均2~3回で選考が終了することが多数派になりました。これが面接の常識というところに落ち着いたわけです。

ところが、最近になってまた、非常に面接回数の多い企業が散見されるようになってきたのです。

「理念採用」で企業が注意すべきこと

面接回数が多くなる採用には特徴があります。1つめは、その会社のなかで重要なポジションの採用であること。2つめは、理念採用の傾向が強いことです。

理念採用では、その企業の文化や行動指針を、面接などの機会に伝達・学習させることを重視します。もちろん能力や実績も重視しているのですが、それに加えて、理念に共鳴しているか、企業の考え方に合っている人物かどうかを重視する採用が行われます。

それから、最近は「ワークサンプル」といって入社後の行動の仮説等を検討するようになりました。ケーススタディを課して、面接だけでは推し量れない潜在能力を選考段階で知ることを重視する企業も現れるようになりました。

私はそうした傾向について否定しません。企業ごとに理念や文化があり、それに合う、合わないという問題は現実にあるからです。

売り手市場が過熱しているときは、候補者にある程度の忖度をするのは無理のないことですが、その一方で忖度や妥協をせず自社に合う人材を厳しく吟味するということは、否定されるべきことではありません。

ただし、次のような点には注意が必要であると思われます。売り手市場の場合はいろいろな対応において決定のスピード感が大事になります。なぜなら、多くの企業がスピードアップをしようと努めているからです。

あせる、あわてるという必要はありませんが、あまりにも採用プロセスが長くなると魅力的な企業であっても選ばれなくなってしまう可能性が高くなります。「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、行き過ぎには充分な注意が必要でしょう。

また、理念採用および役員をはじめとした中核メンバーとの相性を異常に重視し、多くの会食を繰り返す企業もあります。こういう会社は、理念採用の基準を言語化して自社で共有できているかを再確認すべきです。

共有できていないと理念が採用担当者の主観になってしまい、慎重に採用しようとするメリットを自分たちで放棄していることがあるからです。

そして、すこし耳の痛い表現かもしれませんが、多くの面接回数を求職者に課す企業は自社を過大評価していないか、ここを一番冷静に見るべきではないでしょうか。

採用プロセスが適切か確認する

愛社精神があって理念を高く維持している人が採用の最前線に出ていくこと、これは非常に素晴らしいことでメリットしかないと思いますが、ごくまれに狂信的といいますか、新興宗教のようになる企業もあります。

自社を社内で美化する、洗脳的なやり方で求心力を高めている会社は、非常に閉鎖的であることが多いようです。そうなると自社の進めているプロセスを客観的に評価できなくなってしまいます。

そのギャップが大きいと、採用の過程でロスを生み出すことになるので注意してほしいと思います。結果として採用市場から見離されていないかどうかの注意は払わねばなりません。

たとえばエージェントやコンサルタントから「対応が長すぎる」と指摘を受けた場合は、すこし軌道修正して採用の戦略や戦術を見直す必要があるかもしれません。

福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会

代表取締役社長

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