苦戦が続く「クックパッド」新規事業と決算説明資料から見える変化の兆しとは?

料理レシピサイトのはしりであったクックパッドは、ここのところずっと苦戦を強いられています。業績は2021年12月以降、3年連続で赤字が続いており、株価は2015年に高値2,880円をつけてから一方的に下がり続け、いまや200円を割るレベル。10倍株ならぬ、10分の1株となっています。

画像:TradingViewより


有料会員は大幅に減少…

たしかに最近は、インスタなどでもサクッと見やすい動画レシピがたくさん流れてきますので、有料会員となってわざわざクックパッドのレシピを見ようと思う人は少ないかもしれません。

実際、有料会員は2022年の第1四半期時点では180万人でしたが、直近では149.7万人まで減少し、回復する兆しが見えません。わたしは、ちょうど当社の全盛期に社内研修でお邪魔したことあります。ラウンジのようなスペースに、社員のみなさんは自由に食材なども使っていいというオシャレキッチンがドーンとあって、それはもう輝いておりました。今は本社をお引越しして、別の場所に移動しています。おそらく規模はかなり縮小しているのではないでしょうか?

当社がかなりきつめのリストラを行なっているのは、直近の決算説明資料から伺えます。人件費は、前年同期から1,157百万円の減少(前年同期比-72.1%)、販管費全体では、2,220百万円(前年比-62.9%)とえぐいほどの絞り込みです。従業員数は、この1年で393人→125人と68.2%もの減少ですから、社内の密度もガラッと変わったはずです。

画像:クックパッド「2024年12月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)

その効果もあって、第1四半期決算は、営業利益が黒字転換しています。ただし、売り上げ収益は1,539百万円で前年比-29.7%と減収になっていますから、根本的な解決にはいたっていないことが分かります。有料会員からの収益で逆転するのはかなり厳しいように思います。

力を入れる料理のパーソナルトレーニング事業とは?

そこでクックパッドが、新しい事業として力を入れているのが「moment」という料理専門のパーソナルコーチングサービスです。自宅キッチンに専用カメラを設置し、料理している様子を自動で記録。それをもとに、現役の一流料理人が専属コーチとなって、料理の原理原則を踏まえて指導してくれるというもの。

たしかに、調味料を入れる手順やタイミングなどは、人それぞれの経験の中で行なっていることが多いと思いますが、それが必ずしも正しいとは限りません。ほんの少し直すだけで、劇的に料理がおいしくなることも十分、考えられます。自然と身についてしまった悪癖も、自分では気づきませんが、プロなら直してくれそうです。食材の扱いも、原則をしっていればすべての料理に生かすことができ、より料理の幅も広がりそうです。

受講料は、コーチング期間6ヶ月のマスターコースで135,000円(税込)。入会金15,000円+月2万円の内訳です。これを高いと思うか、お値打ちと思うか。

最近、筋トレのパーソナルトレーニングの需要が拡大しています。筋トレも、個々のレベルや体型に合わせたトレーニングのほうが効果的ということが認知され、多少割り高でも結果としては満足がいくということで受け入れられつつあります。料理のパーソナルトレーニングも同様に認知されれば、サービスは拡大するのかもしれません。

決算説明資料にも大きな変化

じつはもうひとつ、当社に大きな変化がありました。名物となっていたポエミーな決算説明書が、ガラリと実務的な仕様に変わったことです。

1年前の2023年12月期の第1四半期決算の説明資料では、冒頭14ページにわたって当社のミッションが書かれています。

画像:クックパッド「2023年12月期第1四半期 決算補足説明資料

直近の説明資料では、それらが1枚に集約され、かなりスッキリしました。

画像:クックパッド「2024年12月期 第1四半期決算補足説明資料

ミッションを語ることが無駄とは思いませんが、それよりも現実を!といった投資家の意向を汲み取ったのか、もしくは、当社の内部改革の意思の表れか。いずれにしろ崖っぷち企業の大きな変化を感じます。

まずは、今期黒字転換できるかどうかしっかり注視していきたいと思います。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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