願う、寄り添う支援を 新居浜・乳児重体事故1年 在宅看護の両親の現状

在宅看護を受ける男児。両親が2時間おきにたん吸引や体位変換などを行う=8日、新居浜市(撮影・石川美咲)

 新居浜上部のぞみ保育園(愛媛県新居浜市中村2丁目)で、当時生後8カ月だった男児(1)が離乳食の生の刻んだリンゴを口にした直後に意識を失い、重体となった事故から16日で1年。行政は同園だけの問題とせず、市内全ての保育施設を対象に再発防止策を進める。一方で、医療的ケア児の支援に関する課題も浮き彫りになった。

 「法律の運用が追いついていない。一人一人の実情に合った支援であってほしい」。昨年末退院した男児の看護を市内の自宅で続ける両親が、事故発生1年を前に愛媛新聞の取材に応じ、現状を明かすとともに医療的ケア児への適切な支援の充実を訴えた。

 両親は2時間おきのたん吸引や体位変換など24時間態勢で看護を継続し、男児は週3回、立位や座位のリハビリにも取り組む。状態は安定しており、1年で体重が3キロほど増え、知らない人が訪問すると違和感を覚えるのか体をよじる動きも見せるなど、少しずつ成長している。回数は少ないものの、男児の兄を含めた一家4人で市内の公園などへ外出もしているという。

 ただ、両親は自宅に戻る準備や行政への補助申請などを通し、疑問に感じることが多々あったと振り返る。

 医療的ケア児とその家族の生活を社会で支えることを理念に掲げ、行政による支援を責務とした「医療的ケア児支援法」が2021年に施行された。以来、支援は拡充されてきたが、福祉サービスを受けられる基準は体の状態や年齢、障害の要因などで異なり、自治体によっても対応はまちまちだ。

 両親によると、国や新居浜市から受けられる支援を網羅した資料が身近になく、独自にホームページなどで調べて市の担当課に問い合わせたが、返答に時間がかかったり、納得できる回答を得られず疑問を感じたりしたことが少なくなかった。例えば介護ベッドの購入補助金の支給対象は6歳以上で、男児は対象外とされた。訪問看護を申し込んでも小児や呼吸器に障害がある患者に対応した実績がないと断られたことがあった。

 今回の事故を受け、原因究明や再発防止策の検討を行ってきた第三者委員会は「医療的ケアを必要とする子どもと家族が、地域でより安心して生活していくための支援拡充と適切なサービス利用につながるよう、各関係機関の連携を願う」と提言した。その実現は男児と両親のみならず、全ての医療的ケア児と保護者の望みだ。

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