「1日21時間以上 子どものケア」… 待たれる「付き添い入院」の環境改善

子どもが入院したとき、家族が病室に泊まり込んでケアをする「付き添い入院」。
まともな食事や睡眠がとれず、家族が心身ともに疲弊するケースも多く、その厳しい環境は長年問題視されてきた。過酷な付き添い入院の実態と、親たちを支えようと生まれたある取り組みを取材した。

▽塚本逸平くん(6歳・宜野湾市)
「いただきます」

宜野湾市に住む塚本逸平くん(6)は1歳半のとき、RSウイルス感染に伴う急性脳症を発症し、24時間の医療的ケアが必要になった。幼い頃は何度も入退院を繰り返し、母の奏子さんはその度に、付き添いで看病にあたってきた。

▽塚本奏子さん
「思い出すのも本当にしんどかったなと辛くなるんですけど、本当に自分のことは全部もうどうでもよくてという状態」

事実上避けられないことも多い「付き添い入院」

子どもに付き添う保護者の入院は、制度上基本的に ”任意” となっているものの、病院側の多くが親に対し付き添いを要請しているのが現状だ。

去年、病気の子を持つ親を支援するNPO団体が公表した調査結果によると、付き添い入院を経験した家族およそ3600人のうち79.1%が「病院から付き添い入院の要請があった」と回答している。

付き添い入院で子どものケアに費やした時間についての質問では、「1日あたり21時間から24時間」と、ほぼ1日中付きっ切りで子どもをケアしたとする回答が25.5%と最も多かった。

▽塚本奏子さん
「ろくなものを食べていなかったし、ちゃんと寝たという記憶もあまりないです。逸平と一緒のベットで細くなりながら端っこに一緒に寝ている感じだった。ちゃんと寝られず、やっぱり病院内なので色んなアラームの音が聞こえてきたりとか、看護師や先生もしょっちゅう見に来るので、本当に心休んで寝ることはあまりできなかった」

医療現場は「手が足りない」6月から改善の動きも…

こうした声を受け、厚生労働省は2024年6月から、新たに診療報酬を適用し医療機関に対して看護師や保育士の配置などを促す。

これに合わせ、県立南部医療センター・こども医療センター(南風原町)では、夜間も働ける看護助手や保育士の増員を検討している。

▽県立南部医療センター・こども医療センター 福里吉充院長
「基本的には(付き添い入院は)お断りすることがベストですけど、事情が事情だけにお母さんの希望、それから子どもの状態を見ながら許可している。ただそういうなかでも看護師や医療者側としては、付き添っているお母さんお父さんにできるだけ負担がないようにしていきたいんですけど、なかなか今完全に解決しているわけではなくて、徐々に少しずつそういう体制を整えていきたいと思っている」

▽県立南部医療センター・こども医療センター 嘉陽晴美副院長
「やっぱり手が足りない。お母さんのことも気にしながらお子様も気にしながらというかたち。ナースエイド(看護助手)もまだ夜間配置できていませんので、もっと人手が欲しいという声はよく聞こえてきます」

「手作りのお弁当」で支える人たち

医療的ケア児を支援する一般社団法人「Kukuru+」は、付き添い入院をしている家族をサポートしようと、3年前に「くくるデリ」をスタートさせた。病院に手作りのお弁当を届ける取り組みだ。県内の就労支援施設と連携し、週に1回、県内3カ所の病院などにお弁当を届けている。

▽就労支援事業所ハルハウス 久手堅牧子さん
「私も子どもが小さいとき、結構ずっと入院の付き添いを一緒にしていた。ちょっとした(自分の)時間っていうのが元気に繋がると思うんですよ。なので今はこういう形で、そういうお母さん方の元気に繋がったらいいな」

塚本逸平君の母・奏子さんも付き添い入院をしていたとき、この「くくるデリ」を利用しました。

「こういうの、みんな待ってたと思う」

▽塚本奏子さん
「こういうの本当にみんな待ってたと思うよ、みたいな。嬉しかったですね。そういうのがあるっていうのは」

入院中、手作りのお弁当に元気をもらった奏子さん。今度は自分が同じ立場にある人たちの力になりたいと、去年、新たなプロジェクトを始めた。

▽塚本奏子さん
「付き添い入院で子どものそばにいると、ご飯を食べている途中に先生たちの回診が入ったり、看護師さんがちょっといいですか、と入ってきたりとか対応しなきゃいけないときもあったりするので、そういうときに片手でさっと食べられるもの、食べてさっと置いて対応できるものがいいなと思って」

奏子さんは、kukuruのスタッフやボランティアの人たちと協力して、手作りの具だくさんおにぎりを月に1回、県内3カ所に届けている。この日は、普段からデリを利用する親御さんが直接、お弁当を受け取りに来てくれた。

▽弁当を注文した小橋川南さん
「付き添いの大変さを知ってくれていると思うので、そういう気持ちだけで多分やってくれているんだろうなと思って、すごくありがたい」

親が笑顔でいることが 子どものチカラに

▽塚本奏子さん
「頑張りましょうね!たまには休んで。ゆっくり。サボってもいいと思います」

当事者だからこそわかる、入院生活の過酷さ。親が笑顔でいることが、病気と闘う子どもにとってなりよりの力になります。

▽塚本奏子さん
「お母さんたちが休めるように保育士の数を増やすとか、看護師さんの数を増やすのもそうですけど、付き添いの人たちのことは無視されている感じるときもあるので、ちょっと気にかけてくれてるな、ということがあると嬉しいかな」

(取材後記)
食事や睡眠もままならない付き添い入院で、親たちは厳しい状況に置かれます。子どもが目の前で病気と闘っている姿を見て「自分が弱音を吐いてはいけない」と、どうしても自分のことを後回しにしてしまうのです。しかし保育士の配置や付き添いの環境改善について、病院側だけで大幅に進めることは難しい部分もあります。付き添い入院制度そのものの、更なる見直しが必要だと感じた取材でした。(取材:RBC NEWS Linkキャスター 仲田紀久子)

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