これで下痢には悩まない(3)あなたの下痢は「過敏性腸症候群」なのか

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下痢に悩み、ネットなどで調べると「過敏性腸症候群」という言葉が目につく。その情報をまとめると、症状は下痢、便秘、腹痛などさまざまで、根本的な病気がない状態で、飲食物を含む物質や肉体的・精神的なストレスなどの感情面が要因になるという。つまり、便に関する症状の多くが当てはまってしまう。これはどういうことなのだろうか。

日本消化器病学会専門医で「東長崎駅前内科クリニック」(東京・豊島区)の吉良文孝院長に解説してもらった。

「過敏性腸症候群での下痢は、基本的に治癒するものではありませんが、病院では治療する上で病名をつける必要があって、無理やり病名をつけると『過敏性腸症候群』になってしまうということです。実は、下痢を止める必要というのは、医学的にはあまりないんですね。栄養素もちゃんと吸収できますし、放っておくと体に悪い何かになるかというと、別にどうもなりません。ですから、医学的には放置しておいてもいいんです」

ただ、ごく一部に病的な下痢も存在する。甲状腺が原因のもの、慢性膵炎のもの、特殊な腸炎によるもの、下痢しやすい種類のポリープなどだ。とはいえ、感染性の胃腸以外では、いずれも確率的にはかなり低い。

注意しなければいけないのは、便の中に血が混じっている、なんらかの薬を大量に服用している、熱が出る、飲酒量が多い、痩せ始めるなど、下痢だけではなく“プラスアルファ”があるケースだ。

「気になる場合は採血して検査しますが、大きな病気につながるようなケースはほとんどありません。みなさん膵臓などを心配されますが、患者さんが思っているほど深刻なことはめったにないんですよ。特にお腹の症状だと、ずっと悩んでいて、ネットで調べて……という方も多いので、『この病気に違いない!』と思い込んでいる方が多い。そういう方はすごく対処がしにくいですよね。調べても良いことは絶対に書いてないので、特に自分のことは調べない方がいいんです。一般の人が表面的に調べると、だいたいがんに行きついてしまいますから」

ネットで検索するのもほどほどにすべきかもしれない。 (つづく)

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